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利下げ、
利下げ、
利下げ・・・で今後は?


世界各国の中央銀行が利下げを継続する中、落ち着きを取り戻したかのように見える金融市場ですが、ホントにもう大丈夫なの?






各国での利下げはまだ続く?
 リーマン・ブラザーズ破綻以来の大きな嵐は、どうやらようやく収束が確認されつつあります。協調利下げ、公的資金注入、その後の各国の利下げ継続と、相次ぐ政策発動がパニックを鎮めるのにとりあえず効果を発揮したというところでしょう。
 気がつけば、昨年の夏に5%以上あった米国の政策金利は、いまや1%まで下がり、7%以上あった豪州でも5.25%まで下がってきました。欧州でも近々に利下げがあることはほぼ確実で、場合によってはかなり大幅なものになるとの予想も出ていますので、一時は6%に迫ろうとしていた英国でも、これからしばらくの間に3%台にまで下がる可能性は十分にありますし、4%台が続いていたユーロ圏でも2%台まで下がっても不思議ではない状況になっています。

景気は「非常に悪くなる」、インフレは「もう心配ない」
 これだけ各国の中央銀行が利下げを行っているのは、今回のパニック的な金融市場の動揺を受けて、経済見通しが大きく変わったためです。今年3月に ベア・スターンズの破綻・救済されてからの数ヶ月間、世界の金融当局、市場関係者の話題の中心は「インフレ」でした。
 ベア・スターンズが救済されたことで、金融システムに対する不安が減退した中、原油価格が毎月1割以上も上がるという事態となり、昨年夏にサブ・プライム問題が激化して以来利下げモードに入っていた米国や英国でも利上げの可能性が語られるようになりましたし、欧州では実際に7月に利上げが行われました。多くの新興国ではインフレが深刻な水準まで上昇し、大幅な利上げを余儀なくされる国も見られるようになっていました。

 しかし、リーマン・ブラザーズ破綻以降、そうした雰囲気は180度変わってしまいました。世界の景気は「非常に悪くなる」という見方がコンセンサスになりました。金融システムの動揺により、銀行がこれまでのようにお金をジャブジャブ貸し出せなくなったことから、今後は米英型の「借金してものを買う」というライフ・スタイルが維持できなくなることが確実だからです。

 銀行がお金をこれまでのように貸せなくなった結果、近年急速に膨張してきたヘッジ・ファンドの活動が急激に縮小していることも、これまで考えられていた以上に景気を冷やす方向で働いていることが明らかになりつつあります。世界の金融は金融のプロが想像していた以上に肥大化し、限界に達していたことが白日のもとにさらされました。「信用バブル」の崩壊です。
 インフレ懸念も急速に減退しています。これは景気が非常に悪くなることがコンセンサスとなったことに加え、金融システムの動揺により「これまで成功してきた投機ポジション」がほぼ全て縮小・解消されていることが拍車をかけています。つまり、ここ数年上昇し続けてきた原油をはじめとする資源や新興国市場が大きく下がり、下落し続けてきた円と米ドルが上昇するという動きが、インフレ懸念を落ち着かせる方向に働いています。

利下げはどこまで続くのか?景気はどこまで落ち込むのか?
 こうした劇的な変化により、中央銀行も思い切った利下げを始めています。そこで問題になるのは、これから先一体どこまで金利が下がるのかです。

 筆者の見方は「金利はまだまだ下がる」です。中央銀行の利下げは確かに進んでいるものの、他の重要な金利が高止まっているため、中央銀行はさらに利下げを行うか、少なくとも非常に低い水準で金利を据え置くかしなければ、重要な金利が下がってこないと考えているためです。ここでいう「重要な金利」とは、住宅ローン金利と企業向けの貸出金利です。これが下がっていないのです。

 筆者が現在住んでいる英国を例にとってみましょう。英国は金融業に対する依存が非常に大きく、金融業者同士の競争も非常に激しくなっています。これはちょうど日本が自動車や電機業界に対する依存が大きく、その中での業者間競争が激しいのに似ています。
 日本の場合、業者間の競争が激しいことから家電や自動車の激しい値崩れがおきていますが、英国では同様に、預金金利が高めに設定され、貸出金利が低めになる傾向があります。銀行にとっては「貸出金利−預金金利」が利益になりますので、利幅を犠牲にして業者間の競争に勤しんでいるためにそうなります。

 こうした競争の結果、実は英国では米国と比べても早い段階でそれなりの規模の銀行破たんが発生し既に国有化されています。各銀行とも体力をかなり消耗している中で、彼らが最初にやったことは、住宅ローンを新規に貸し出すことをストップすることでした。統計によれば、英国の不動産業者は今年9月の一ヶ月間で、一社あたり平均2〜3件しか家が売れないという事態になりました。こうした状況では、「利下げの効果」など出る由もありません。
 企業向け貸し出しについても、大手のHSBCの経営トップが公然と「利下げがあっても貸出金利を引き下げないかもしれない」と発言し、政府・当局から非難を受けています。銀行は貸出金利を下げたくないのです。
 さらに、預金金利も実はあまり下がっていません。金融市場が動揺していますので、銀行は債券などを発行し市場からお金を調達しようとすると、とんでもない金利を払わなければならなくなっています。手元に資金がないといつ資金繰り破綻をするかわからないような状況ですから、預金を少しでも増やそうと、預金金利はかなり高めに設定しています。しかも英国では、日本でもニュースになっているように、アイスランドのような外国の銀行でも金利さえ高ければお金がかなり集まるという社会文化ですので、預金金利は各銀行ともできるだけ高めにしておかないと競争に負けてしまいます。預金金利が下がらなければ、銀行としては貸出金利を引き下げられません。利益が上がらなければ、破綻の可能性があるような状態では、簡単に貸出金利を引き下げられないからです。

 以上は英国の例ですが、米国も同じような状況です。筆者の「肌感覚」からいっても、この先少々の利下げがあった程度では、こうした「重要な金利」はなかなか下がらないと思われます。とにかく、金融システムが回復し、銀行が重要な金利を下げ始め、それにより景気が目に見えて回復するまでは、とにかく中央銀行としては政策金利を低く抑えるしかないでしょう。
 金利はまだまだ下がる。そう考えていた方が良いと筆者は見ています。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿