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ドル高誘導で世界のインフレは鎮静化なるか
「公的資金注入」決定、
しかしまだ円高か?
「公的資金注入決定」で、落ち着きを見せたかのように思える金融市場のパニックですが、本当に収束したの?
欧米の多くの国々で「公的資金注入」が決定
金融市場のパニックはひとまず収束したように見えます。正確に言えば「収束して欲しいと皆が思っている」だけかもしれませんが、少なくとも「パニックを落ちかせる効果があると思われる」政策が出てきました。
10月8日(水)に英国が国内銀行に公的資本注入を行うと発表して以降、独、仏、伊が続き、週末のワシントンで開かれたG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)に合わせる形で、米国も資本注入の決定を表明しました。この発表により、13日(月)は世界の主要市場でのきなみ8〜12%の上昇となり、祝日のため休場だった日本でも円相場が大幅安となるなど大きく反応しました。
「パニック収束=急速な円高に歯止め」だが・・・
発表後の13〜14日の円相場を見ると、豪ドルが64円台から74円へと15%もの円安となった他、ユーロが133円程度から一時141円へ約7%、英ポンドも165円台から一時181円台と約9%の円安となりました。これらの通貨はこのところの下落がかなり激しかったため、戻りも大きくなっています。もっとも売られていた通貨のひとつである韓国ウォンに至っては、100ウォン=6.9円から8.5円まで25%以上も急進しています。
ただ、この円安も2日程度しか続きませんでした。株式市場が15日(水)には再び下落し始めたのと同時に、円相場も再び円高方向に動き始め、その後数日間で公的資金注入発表時とほぼ同程度のところまで落ち込んでしまっています。
「金融パニック」が収まっても「実体経済」が悪化するのはこれから
公的資金注入の発表によりパニックが収まった後、再び市場環境が悪化しているのは、「仮に金融パニックが収まっても、実体経済が悪化するのはこれからなので、まだ安心はできない」という見方が強いためです。
この見方には一理も二理もあります。積極的に株式や外貨に投資を行っている人は別として、一般の金融市場の動きとは関係ない生活をしている人々、とくに日本の人々にとっては、景気が目立って悪くなっているという実感はまだそれほどはないでしょう。金融市場が「1929年の大恐慌以来」とか「100年に一度のパニック」といわれている割には、多少雰囲気は悪化しているものの、まだ大丈夫だ、というのが実感ではないかと思われます。
これは「問題が起こっているのは金融の世界だけなので、自分たちには関係ない」ということでは決してありません。まだ問題が波及していないだけだとほぼ100%断言できます。
世界の金融機関、金融システムは本当におかしくなっています。しかも今回の場合は数年、あるいは数十年という単位で積み重ねてきた「お金の貸しすぎ」の反動が来たというのが実態であるため、一朝一夕に修復できるものではなくなっています。修復するために、今後いったいどれだけ長い時間がかかるのか、今のところは見当もつかないというのが正直なところです。
そして日本人にはおなじみのところですが、「金融システムの修復」にはものすごいコスト=「長い不況」が確実に必要です。日本のいわゆる「失われた10年」というのは本質的に「金融システムの修復」の歴史です。今までは普通にお金を借りて商売していた人々が、突然にお金を借りられなくなり、しかもお金を返せと迫られ、事業を縮小せざるを得なくなったり、倒産したりする、そういう歴史です。これが今回は世界的規模でやってくるのがほぼ確実な状況になっています。
もちろん「長い不況」以外の解決策がないわけではありません。ひとつは、当時の日本でも流行った「調整インフレ政策」です。世の中がものすごいインフレになれば、人々は簡単にお金を返せるようになります。例えば今4千万円の住宅ローンを抱えていても、ものすごいインフレになって年収800万円が3,000万円になれば、4,000万円の住宅ローンはインフレになっても4,000万円のままですから、返済は非常に楽になります。
ただこの政策はその後もインフレが収まらなくなるという大きなリスクがあります。いったん問題が解決すれば、インフレは全ての人にとって困ったことになります。貯金の価値はどんどん目減りしていくため、誰も貯金をしなくなりますし、給料をもらってもすぐ使わないとお金の価値がどんどん落ちていきます。誰かにお金を貸してもその価値がどんどん落ちていきますから銀行は誰にも貸したくなくなります。結局経済は大混乱してしまいますので、この方法はほぼ使えないと思っておいたほうが良いでしょう。
それでも円は十分に上がったかも?
以上のように、金融パニックが収まったとしても、いったいどこまで景気が悪化するかという問題が待っています。ただし、ここ数ヶ月のパニックの間に、株式市場や為替市場が、この「将来の不況」をそれなりに織り込んでいる可能性も十分にあります。
今後の投資の勝負は、現在の市場がそれをどこまで織り込んでいるのかを見極めることです。筆者はおそらく、多くの市場、とくに最近大きく下落した市場は、既にかなりの不況を織り込んでいると考えています。
円相場はそのひとつではないでしょうか?もちろん確信はありません。ただ、日本の高齢化と低成長は間違いなく続きます。円安のため老後の海外移住を断念、または躊躇していた団塊引退世代にとっても、最近の円高と海外不動産市場の下落によって十分にペイするようになってきているはずです。筆者はここから先の円高をそれほど心配していません。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿