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為替市場のパニック状態、
収める材料はどこに


為替市場は大パニックです。日本人個人投資家に大人気だった「豪ドル買い/円売り」ポジションはここ3ヶ月あまりの間に104円から64円まで約4割の下落となっています。これは率直に言って「非常事態=パニック」です。






「信用バブル崩壊」第2幕
 筆者は、今年7月にフレディ・マック、ファニー・メイの両米住宅金融公社の財務問題が明らかになった時点で、昨年来の金融市場の混乱の「第2幕」が始まった可能性が高いと当コラムで指摘してきましたが、その当時に想像していた状況をはるかに上回るパニックになってきています。

 為替市場ではとにかく「円買い」が優勢です。これは昨年から今年3月ベア・スターンズ破綻までの「第1幕」にも見られましたが、「金融市場の混乱」→「リスク回避傾向」→「円キャリー・トレードの縮小」→「円高」という構造によるものです。
 「第1幕」との違いは、とにかく全ての通貨に対して大幅に円高が進んでいることです。第1幕では基本的には「不動産市場がおかしくなってきた国の通貨」である米ドルや英ポンドといったところに限定されていましたが、今回の「第2幕」では豪ドルのようなとくにこれまで数年にわたり好調だった通貨が中心に大暴落しています。

パニックを収める材料は?
 筆者は今回のパニックをひときわ恐ろしく感じています。というのも、今回のパニックを収めるような材料がなかなか見当たらないからです。「第2幕」が始まって以来、世界の金融当局はこの事態に対してけっして手をこまねいていたわけではありません。
 米国では一度は否決されたものの「金融安定化法」が成立しました。これは主に金融機関のいわゆる不良債権を政府が買い取ることができるようにするもので、同時に、金融機関への資本注入も可能になっています。総額は日本円で約75兆円です。

 また、欧州では日本で言うところの「預金保険機構」が預金を全額保護する方針を、ドイツを含む多くの国が決定し始めていますし、英国でも総額500億ポンド(約9兆円)の資本注入方針を決めています。豪州でも一度に1%の利下げを行い、国内景気のテコ入れを進めています。
 しかしながらこれだけやってもパニックは収まるどころか、ますます拍車がかかっているようにも見えます。非常に恐ろしい状態なのではないかと思わざるを得ません。

まずは「協調的な利下げ」が不可欠か?
 では、パニックが収まるためには、いったい何が必要なのでしょうか?「第1幕」が最終的に収まったのは「ベア・スターンズ」という大手投資銀行が破綻はしたものの、JPモルガン・チェースに救済されたためでした。つまり「大手金融機関はつぶれないという安心感」がパニックに終止符を打ったわけです。しかしながら、今回はリーマン・ブラザーズが実際に破綻しました。リーマンの場合は破綻した後、優良な部門のみをバークレイズや野村證券が買い、不良部門については多くの人々の「損」というかたちで処理されました。こういう前例ができていますので、「救済」がパニックの特効薬になることはもはやありません。実際、AIGが政府に救済されても市場に与えるインパクトはまったくといっていいほどありませんでした。

 そうした中で、もしもパニックに対して「少なくとも一時的な効果」をもてるような薬があるとすれば、それは「利下げ」しかないと思います。「第1幕」で最大の危機は今年1月の株式市場の大暴落でしたが、その危機をとりあえずとめたのは、米FRB(連邦準備制度理事会)による0.75%の緊急利下げと、そのわずか12日後に行われた定例FOMC(連邦準備制度理事会)での0.5%追加利下げでした。今回も、パニック収束には前回と同じようなインパクトのある利下げが求められていると筆者は考えています。

 さて、「利下げ」といっても米国の政策金利は既に2.0%まで引き下げられており、多少引き下げてもそれほど大きなインパクトはもはやないように感じられます。しかも2.0%はあくまでも「金利の誘導目標」で、ここ1ヶ月ほどの「実際の金利」を見ると、日によって大きな差があるものの、平均するとだいたい1.5%程度の推移となっています。従って、実質的には、「既に0.5%の利下げが実行された状態」になっています。

 そうした状況の中で、もしもインパクトをもたせることができるものがあるとするならば、それは「国際的な協調利下げ」しかないと思います。ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)はインフレ警戒から、今年7月に利上げを実行するという「重大なミス(と筆者は少なくとも思っています)」を犯しています。英国でも昨年11月から3回利下げを実行していますが、今年の4月を最後に利下げを行っていません。
 これらの国が利下げを米国と協調した形で、しかも「緊急措置」として行うことがあれば、それなりのインパクトがあります。パニックも収束するかもしれません。しかしながら、仮にパニックが収まっても、その後回復するかというと、まだそこまでは見えていないというのが現状です。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿