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米ドル高は「夏休みの薄商い」の産物か?


米ドルだけが不思議と上昇しています。いろいろ理由は考えられますが、もしかして・・・世界の夏休みが原因?






意外なほどの米ドル高
 米ドル/円は110円を越えてドル高円安になってきました。今回は「円安」ではなく、完全に「ドル高」です。
 ユーロ、豪ドル、英ポンド、NZ(ニュージー・ランド)ドル、加ドルといったほとんどの主要通貨は円に対して下落しているのに対し、米ドルだけがスルスルと上昇しています。正直言って意外なほどの米ドルの強さです。

資源価格の下落
 今回の「米ドル高」は「資源価格の下落」が要因・・・と筆者も含めて多くの人がこれまでそう考えてきましたが、どうも違うのかもしれないという雰囲気が最近の市場には流れています。この点を少々掘り下げるのが今週のテーマです。

 2週間ほど前に米ドルが上昇し始めた頃は、「原油価格の高騰は米ドル安のせいだ」という声が強く、ついに原油をはじめとする資源価格が調整を始めたことが米ドル上昇の要因、と言う見方が一般的でしたし、筆者もそう考えていました。
 しかし、世界の景気見通しが日に日に悪化する中、原油をはじめとする資源の需要拡大に対する期待がとりあえず幾許か減退したことや、これほど資源価格が上昇した結果、世界経済にマイナスの影響がかなり大きくなってきたので、もうそろそろ価格が下がらないと景気が持たないと考える人が増えたこと等が資源価格の調整をもたらし、ひいてはそれが米ドル高を引き起こした・・・そう考えたわけです。

新興国通貨が不調に
 この論理で行くと新興国の通貨も上昇するはずでした。実際、2週間ほど前に資源価格が調整し始めた直後は新興国通貨は好調でした。しかしながら、その後しばらくして新興国の通貨は不調に転じています。
 もともとは、これまで先進国以上にインフレ圧力を受けてきた新興国にとって、原油価格等の資源価格の調整は追い風で、これは新興国通貨の上昇要因になると思われていました。しかしながらどうも最近は、「世界経済が調整すれば新興国はかなり大きな影響を受けるかもしれない」という今年の1〜3月頃の、株式が暴落した際に新興国通貨も一緒に下がっていた頃の動きに似てきています。明らかに市場のテーマが「インフレ」から「景気不安」に移る中、インフレ圧力の減退を歓迎し新興国通貨を買い上げる動きよりも、景気に対する不安により新興国通貨を売る動きの方が強まっている感じがします。

景気不安は米ドル高要因なのか?
 さて、ここで考えなければならないのは、「果たして景気不安は米ドル高要因になりうるのかどうか」です。これは直感的にはありえません。しかしながら現実には目の前で日に日に米ドルが上昇しています。それはどうしてでしょう?

 これは非常に乱暴な意見かもしれませんが、市場参加者の中にはこう考える人がかなりいるようです。それは「8月は市場のメイン・プレイヤーが夏休みに入るので、彼らが休み前にポジションを閉じたことで、これまでとはまったく反対の動きが様々な市場で起きた」という見方です。
 例えば、資源価格の調整は「4〜6月にかけて急騰した際に築いたロング・ポジション(買い持ち)の取り崩しによるもの」であり、米ドル高も「米ドルのショート(売り持ち)の解消」であり、米ドル以外の通貨に対する円高も「円ショートの解消」が主要因であるという見方です。
 そうであれば新興国の通貨安も説明がつきます。新興国通貨は3月のベア・スターンズ救済以降、株式市場が調整を始めてもずっと回復を続けてきました。その間に築かれたロング・ポジションが夏休み前に取り崩された結果、最近は新興国通貨も不調になっているという可能性があります。
 確かに市場の流動性は極端に薄くなっています。毎年8月は夏休みで市場参加者が減るのですが、今年は特にそういう傾向が強いと感じる人が多いようです。昨年までと比べると、サブ・プライム問題が先鋭化してからヘッジ・ファンドがかなり縮小した結果、こうした商いが薄くなる時期だからこそ動こうという「あまのじゃく」な人が減っていることが原因になっているかもしれません。

 夏休みはもうしばらく続きます。日本のお盆休みはもう明けますが、欧米の夏休みはもう1週間ほど続きます。今回の動きが単なる「夏休み」に関連するものなのか、果たしてより深い意味をもっているのか、明らかになるのはもうすぐです。仮に夏休みが原因なのであれば、意外なほどに上昇した米ドルが急落することもあるかもしれません。米ドルが110円を越えたので、もう円高への回帰はない等と安心すると痛い目にあうかもしれません。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿