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注目!
ユーロの利上げは、
正解か間違いか
利上げを実施したユーロの選択は本当に正しかったのか、今後のユーロの景気動向をしっかり見守って行きましょう。
ECB(欧州中央銀行)がついに利上げ実施
7月3日(木)、ユーロの金利を決定するECB(欧州中央銀行)が利上げに踏み切りました。利上げは昨年6月以来です。利上げの理由は「インフレ懸念」に尽きます。原油価格や食料品の上昇に対応するために利上げが必要、と言うのが欧州の中央銀行の考え方だということです。
米国はこの1年間で合計3.25%利下げしているが・・・
ただ、ECBの前回の利上げから今回の利上げまでの約1年の間というのは、世界ではサブ・プライム問題が猛威をふるい、米国では5.25%から2.0%まで、合計3.25%もの利下げが実施された期間です。この間、米国でもインフレ懸念がなかったわけではありません。むしろ、米ドルが下落し続けたことで輸入品の値段は上がりやすくなっており、欧州以上にインフレ懸念は強かったのが現実ですが、にもかかわらず、ここまで利下げをおこなったのは「景気不安」がそれほど強かったためです。
欧米の政策協調に不安も
翻って欧州の状況を見ると、確かに米国ほどは景気に対する不安は強くありませんが、まったくないというわけではない状態です。スペインやアイルランドでは不動産バブルが崩壊し、米国と同様の影響が出ています。こうした景気が弱めの国にとっては、今回のECBの利上げは必ずしも諸手をあげて賛成というわけではないでしょう。伝えられるところでは、ECB内部の議論も今回の利上げを巡って相当に意見が割れているようです。
それでも利上げを強行したのは、欧州の中央銀行が伝統的な「インフレ・ファイター」であるということがやはり大きく影響していると思われます。第1次大戦、第2次大戦時のドイツのハイパー・インフレが社会不安を生みナチスの台頭を招いたという歴史が、インフレに対する警戒を非常に強くさせるという「伝統」が欧州にはあります。
それに対して米国の中央銀行であるFRBは、物価の安定とともに「完全雇用」、つまり景気をできるだけ良い状態に保つという「使命」を法律で与えられており、景気に不安があれば果敢に利下げを行う体質があります。
このように、米国と欧州ではそもそも考え方が根本的に異なるのですが、世界経済を安定させるために、欧米の中央銀行は実際には常に「協調」を模索しています。今回の利上げまでの1年間、ECBが利上げを行わなかったのも、米国との協調を意識していたためと考えるのが最もしっくりきます。
しかしながら今回ECBは利上げに踏み切りました。協調体制は弱まっている可能性があります。はたして協調が本当に弱まっているのかどうか、市場参加者の興味はかなり大きくなっています。
利上げ実施後、長期金利は低下 − 利上げは間違い?
さて、筆者は今回の利上げに対して市場がどう反応するかに注目しました。その結果感じたのは、どうも「ECBの利上げは間違い」と見る人が多そうだということです。
まず、今回の利下げ発表後、ユーロ圏では長期金利が急低下しました。これは「利上げをすれば将来的なインフレのリスクは弱まる」という見方によるところも一部ありますが、むしろそれよりも「利上げにより景気下降リスクが高まる」という見方によるところが強いと筆者には感じられます。
ユーロもドルに対して上昇していません。利上げ発表直後こそ上昇したものの、その後は落ち着いています。「米国が利下げで欧州が利上げなら、ユーロは上昇」と単純には行きません。「ユーロ圏は利上げにより景気が失速し、今後はユーロが下落に転ずる」かもしれないと思う人もそれなりにいるからです(筆者もその1人です)。
「協調が緩んでいるのか」「ECBが間違っているのか」、暫くすれば明らかに
ただ、今のところこうした市場の動きは小さなものにとどまっています。欧米の協調が本当に弱まっているのかはまだ分かりませんし、ECBが本当に間違っているのかも分かりません。市場は手探りでその辺りを探っているところです。
ほぼ確実だと思われるのは、仮に欧州の景気が今後も堅調を続けることができれば、ECBは正しかったと証明され、ユーロがかなり上昇する可能性があるということです。上述のように、筆者はそうなる可能性は高くはないと考えていますが、実際にどうなるかは時間が経たなければ分かりません。
またそうなると、欧米の協調体制が試されることになります。米国は明らかに米ドル高を望み始めていますので、ユーロが大幅に上昇するのは困りものです。この時「協調介入」を行い米ドルを押し上げることができるか、これを試すことになるでしょう。ここで介入があれば、米ドルは本格的に底入れの可能性があると筆者は見ています。
逆に、筆者が考えるとおり協調体制が緩んでおり、しかもECBの利上げが「間違い」であった場合は、ECBが信頼を失うかたちでユーロ安が進む可能性があります。協調が仮に続いていたとしても、ECBの利上げが間違いであると明らかになれば、これは米国にとって渡りに船ですから、ユーロ安が進むでしょう。
従って、ユーロの行方は今回の利上げによりユーロ圏の景気がどうなるかにかかっていると考えられます。ユーロの景気がよければユーロ高、悪くなればユーロ安。また協調体制が緩んでいればその動きはかなり大きくなり、協調が続いていればそれほど大きくならなくてすむ・・・そんな展開を予想しています。注目しましょう。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿