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緊急提言!米国サブプライム問題からの教訓
米景気がさらに悪化したら?
相場予測はいかに
パニックからは脱した様子のサブ・プライム問題ですが、実はこれから表面化してくる問題が思いのほか多そう・・・。米国の今後の景気に注目です。
焦点は「サブ・プライム」から「米国の景気がどの程度悪化するか」に
サブ・プライム問題に端を発するパニックは一旦収束しましたが、今後も米住宅市場にまつわる問題はたくさん出てくるでしょう。しかしながら、今回見られたような「信用不安」を伴うパニックが、今回と同じような程度で発生する可能性はかなり低くなったと考えてよいと思います。何かあれば、中央銀行が迅速且つ適切に対応する用意があることが確実になっていますので、疑心暗鬼から必要以上に市場が大きく動くような事態の再発は回避できると考えられるからです。
今後のポイントは「サブ・プライム・ローン」そのものではなく、サブ・プライム問題で傷ついた金融機関による貸し渋りや、住宅価格の下落により財布の紐を締めざるを得なくなる家計部門が、どの程度「米国の景気」を悪化させるかということになってくると思います。
現時点ではまだまだ楽観論が強い?
現時点の市場の雰囲気を見ると、「これから中央銀行が適切に対応してくれるので、それほど景気が悪化することはない」という見方が強いように思えます。米FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを行ってから、株式市場も為替市場もほぼパニック発生前の状況に戻りました。例外は、米ドルが値下がりしたこと、金利が世界的に下がっていること、NZ(ニュージーランド)ドルが若干下がっていること、日本株が出遅れていることくらいです。米ドルが値下がりしているのはアメリカが実際に利下げをやって、米ドルを保有する時にもらえる金利が少なくなったためです。NZドルが下がっているのは、おそらく景気がそれほど良くないにもかかわらず、際立った高金利の魅力で買われすぎていたのが修正されたためでしょう。
全体としては、やはり「各国の中央銀行が金利を下げれば、世界経済全体が不景気になることはない」という楽観論が強いといえます。世界経済全体が「堅調」であるならば、金利が下がった米ドルを買うのはイヤだけれども、円売り/高金利買いのキャリー・トレードは続けても大丈夫そうだし、株も下がらないだろうという「楽観」です。米国の景気が物凄く悪化し、世界経済全体が思った以上に冷え込んでしまうような事態はあまり考えられていないようです。
米国の景気は今後数ヶ月の間に方向性が決まってくる
では、米国の景気は実際のところどうなる可能性が高いのでしょうか?ここから先は筆者の個人的な考え方ですが、筆者は「コンセンサス以上に悪化する可能性が高い」と見ています。楽観はできない状況です。筆者の目から見ると、大多数の市場参加者は2000年のITバブル崩壊以降、いかに米国の住宅ブームが景気を下支えしてきたか、それによっていかに米国民の消費水準が「過剰」になっていたか、その辺りの認識が甘いように思えます。確かにいまのところ、住宅市場の悪化の影響は、それほど経済全体には波及していませんが、これは住宅特有の価格が不透明なせいだと考えています。そもそも不動産の値段というのは、結局、実際に取引されないと本当はいくらなのか分からいないのですが、そんなにポンポンと売れるようなモノではないですから、数少ない取引事例を参考にして評価されます。しかしながら、現在の状況は値段を下げても下げても売れず、業者の在庫がどんどん増えている状況で、つまり、実際のところ不動産価格が今足元でどのくらい下がっているのかがまったく分からないのです。
仮に大方の人が考えているよりも実際の値段は大きく下がっていたとしたら、様々な問題が出てきます。まずその物件自体を担保にしてローンを貸している金融機関は、担保価値が目減りしていますので、回収を急ぎます。また、たとえ担保にはなっていなくても、お金を借りている側から見れば、自分の資産である家の価値以上のローンを借りている状態になる可能性があります。日本のバブル崩壊以降にも多くの方々がこうした状況に陥りましたので、読者の皆様の中にも不幸ながらそうした経験をなされた方も多いと思いますが、これは大変な状況です。間違いなく財布の紐は締めなければならなくなります。
筆者は、おそらくこれから数ヶ月の間に、多くの人たちが自分の家の値段が本当はどうなっているのかを知ることになると思います。さらに、これから数ヶ月の間に、「当初据え置き期間」が終わる変動金利ローンの金利アップ等、さまざまな優遇措置が終わるローンが続出すると言われています。そうしたことを考えると、現状の市場の雰囲気はやや「楽観的すぎる」可能性が高いのではないかと思わざるをえません。
「米景気が思ったよりもずっと悪い」時、相場はどう動くのか?
では、米国の景気が思ったよりもずっと悪いことが明らかになった場合、金融市場はどう動くかでしょうか?結論から言えば、米ドル安、中短期中心の金利低下、それに若干の円高と株安になる可能性が高いと考えられます。
米景気が悪化した場合に最初に動くのは、間違いなくFRBです。現在、債券市場ではFRBの今後の利下げはせいぜいあと2〜3回程度と考えられていますが、おそらくそれよりもずっと多くの利下げを行わざるを得なくなると思われます。こうした時、米国の金利は中短期(期間5年程度まで)を中心にかなり大きく下がります。米国の短期金利は2003年〜2004年にかけて1.0%まで下がりました。現在の水準は4.75%で、今回ここまで下がるかどうかは微妙ですが、2%台までの低下は十分にありうると筆者は考えています。
そうなると為替市場では、米ドル安が一気に進むはずです。今後も資源セクターを中心に好調が予想される豪ドル、東欧の発展で勢いづいているユーロ、東欧の通貨、中国の発展の恩恵を強く受ける東南アジアの通貨は、なかでもとくに対米ドルで上昇すると思われます。
株式市場は景気悪化がマイナスに働きますが、金利の低下が下支えする上、おそらく新興国の発展に支えられて世界経済全体がひどい状況になるような事態は避けられると思われるので、それほど大きく下げずにすむのではないかと考えています。仮にそうなれば「円・キャリー取引」もそれほど急激に縮小することはなく、対米ドルでは円高となるものの、対ユーロや対豪ドルの円高は回避されると予想しています。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿