2007.10.29
米景気がさらに悪化したら?相場予測はいかに

 2007.10.22
「円安バブル」はFXブームが原因か?

 2007.10.15
今って実際のトコロ、円安なの?円高なの?

 2007.10.15
米国0.5%利下げでアジア株「爆騰」のワケ

 2007.10. 9
米ドル以外に対して円安という現状のフシギ

 2007.10. 2

 2007. 9.26
米ドル安再開、米国の大幅金融緩和はホント?

 2007. 9.18
サブ・プライム・パニック後の株式市場を占う

 2007. 9.10
サブ・プライム問題、中央銀行の巧みな対策

 2007. 9. 3
サブ・プライム問題は今後どう収束する?

 2007. 8.31
緊急提言!米国サブプライム問題からの教訓

 2007. 8.21
なぜ米国の住宅ローン問題で米国以外が大影響

 2007. 8.10
「分からないことだらけ」で株式市場急落?

 2007. 8. 6
住宅不動産問題で米ドル全面安はどこまで続く

 2007. 7.30
今って円安バブル?弾けてみないとわからない

 2007. 7.24
為替市場に影響与えるサブ・プライム問題って














米国のサプライズ、
0.5%利下げの衝撃


今週、米国が大方の予想以上の利下げを実行した結果、市場は株高・米ドル安・円安・長期金利上昇へと動きました。さて今後の焦点は?






米国が一気に0.5%の利下げを実施
 サブ・プライム問題に端を発した金融パニックは新たな局面に入ったようです。各国の中央銀行はパニックが発生して以来適切な対応をしてきましたが、その中でも世界最大の経済大国で、世界の基軸通貨である米ドルの資金量をコントロールしている米国のFRB(連邦準備制度理事会)が、18日(火)「0.5%の利下げ」という大胆な政策を打ってきました。

 事前の予想では、一部に0.5%の利下げの可能性が高いという見方をする参加者もおりましたが、コンセンサスとしては0.25%の利下げにとりあえずとどめ、10月、12月とそれぞれ0.25%の連続利下げを行って、年末までに政策金利を4.5%まで下げるだろうという見方が一般的でした。

 FRBはこうした市場コンセンサスに対して「サプライズ」を起こそうという意図があったものと思われます。市場参加者が考えている以上に、当局はパニックの進行を回避するために行動する用意があるということを示したものと考えられます。

株高、米ドル安、円安に
 この「サプライズ」の結果、市場は「株高、米ドル安、円安、長期金利上昇」に動きました。
 株高・米ドル安になったのは分かりやすいと思います。当局が「経済を助ける」用意があることが示されたことで株式市場はそれを好感し、また米国の予想を上回る短期金利低下を受けて欧州やオセアニアと米国の金利差が米ドルに不利になったことから、為替市場が米ドル売りで対応したことによるものです。

 株式市場では、この発表を受けてNYダウ平均相場が300ドル以上も上昇し、7月中旬に記録した14,000ドルの史上最高値まであと一歩に迫る13,700ドル台まで回復しました。NYダウ平均は一時12,800ドル台まで下げていましたので、一連のFRBの政策でほとんどパニック発生前の水準に戻りつつあります。

 またパニックに伴う「円安ポジション解消」が、それまでとくに好調だった豪ドルやユーロに集中し、結果としてあまり大きく動いていなかった米ドルよりも下がってしまうという事態が発生していた為替市場でも、ユーロは米ドルで史上最高値を再び更新、ピークから対米ドルで11%下げていた豪ドルもあと3%でピーク時に戻るところまで回復しています。

 円高も収まってきました。円は米ドルの動きとは無関係に、単純に「市場がリスクをとりやすいと考えている時=株式市場が好調な時」に円安になり、逆に「市場はリスク回避に動く時=株式市場が下がる時」に円高になるという傾向が鮮明です。世界の中で際立って低金利で、中長期的に考えても国内に円を使って投資するチャンスがどんどん減っていくことが確実視される円は、放っておけばどんどん下がる環境にあります。円は対米ドルでこそ直近のピークである124円まではまだ遠い116円近辺にとどまっていますが、対ユーロではピークである169円が視野に入る162円まで回復しましたし、対豪ドルでも一時の86円付近からが視野に入る99円まで大きく回復してきました。

日本も利上げ見送り
 また、米国利下げの翌日19日(水)に行われた日銀の金融政策決定会合でも、予想通り「利上げの見送り」が決定されました。見送り自体は事前予想通りでしたからまったくサプライズはありませんでしたが、前日の米国の利下げが予想を上回るものでしたから、それを受けて日本の金融政策の方向を今後どのように行うのかに注目が集まります。

 残念ながらこの原稿を書いている時点では政策決定後の福井総裁の会見の内容がまだ明らかになっていませんので何ともいえませんが、常識的に考えれば、米国が金融緩和を必要があれば続ける姿勢を鮮明にしている中で、利上げを行うのは極めて難しいのが現実です。日本の利上げついては今後2〜3年、1年間に0.5%ずつ上げていくというイメージがコンセンサスになっていますが、この利上げスケジュールも遅れていくことになる可能性が高くなってきたと思います。仮にそうなれば間違いなく円安要因になるでしょう。

次の焦点は「景気が実際にどの程度悪化するのか」
 さて、筆者は「パニックが当局の対応により収まれば、次は経済実態を素直に反映した相場になる」と予想してきました。今のところの展開はまさにその通りで、今回の0.5%利下げでパニックは完全に収束し、次は経済実態を見極める局面に映る可能性が極めて高いと考えています。従って、今後の焦点は「実際にどの程度景気が悪化するのか」という点です。

 市場の動きをつぶさに観察すると、長期金利が上昇していることが気になります。これは債券市場参加者を中心に、今回の0.5%の大幅利下げにより景気はすぐに回復し、「インフレ」や「バブル発生」の可能性が高まると考えている人がそれなりに存在しているためです。

 過去の歴史を振り返ってみても、今回の利下げを「景気後退のサイン」と捉えることも(実は「最初の利下げ」が0.5%になると、必ず景気後退になっています)できるものの、冷静に景気指標を見れば「景気拡大の中だるみ局面」と捉えることも不可能ではなく、見方が分かれるところです。筆者はおそらく景気後退に相当近い状態になる可能性が高いと思っていますが、これはもうしばらく推移を見守らないと結論はでません。従って金融市場はしばらくは景気指標に一喜一憂し非常に不安定な動きになり、だいたい2ヶ月くらいの間に方向感が明らかになってくる、そんな展開を予想しています。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿