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サブ・プライム・パニック後の株式市場を占う

ようやく収まりかけてきたサブ・プライム・パニックですが、今後の株式市場にどのような影響を与えるでしょうか?






各国中央銀行により封じ込められつつある「パニック」
 「サブ・プライム・パニック」は各国中央銀行の適切かつ迅速な対応により、封じ込められつつあるようです。足元で不安定な動きは続いているものの、ピークの14,000ドルから12,500ドルまで下げたNYダウ平均株価も13,400ドル近辺まで戻しましたし、18,000円台から15,000円台前半まで下げていた日経平均株価も16,500円まで回復してきました。

 とくに大きかったのは、8月16日(木)に予定外の米FOMC(連邦公開市場委員会)が緊急に行われ、「公定歩合引き下げ」が決定されたことです。その後も、日銀がパニック発生直前までほぼ確実視されていた利上げを23日(木)の会合で見送り、各国の当局がこの問題を重視している姿勢が色濃くなっています。

 今月は6日(木)に欧州中央銀行とイングランド銀行が、19日(水)に米FOMC、20(木)に日銀が政策決定の会議を行います。市場では、米国で利下げが開始されることがほぼ確実視されており、他の中央銀行は利上げを見送ると予想されています。仮にその通りになれば、一層の安心感から「パニック」は収束に向かう可能性が高いでしょう。

世界の景気は「堅調」、グローバル化
 さて、問題はパニックが去った後です。足元ではパニックに狼狽し、非常に悲観的な見方をする人も増えています。しかしながら、結論的にいえば、筆者はそれほど悲観する必要はないと見ています。

 その最大の理由は、「世界全体の景気」は「堅調」だからです。確かに米国の景気は今後いっそうの減速を余儀なくされると思います。サブ・プライム問題は急に出てきたわけではなく、1年半ほど前から続いている米住宅・不動産部門の急速な冷え込みの影響がようやく具体的な形で現れたものです。これは本来であればもっとゆっくりとしたかたちで徐々に影響が出てくるはずであったものが、いわゆる「証券化商品」によりオブラートにくるまれていたために、なかなか影響が出なかったと考えるとよろしいと思います。流動性がほとんどなく価格形成が不透明な商品に形を変えていたため、なかなか問題がどの程度のものになっているのかが表面に現れなかっただけだというのが実態でしょう。

 このため、「米国の景気」は今後も住宅・不動産部門の影響を受け、減速感を強めていくと予想されます。ただし、米国以外の景気は非常に堅調です。とくに「経済のグローバル化」が急速に進んでいますので、米国の減速の影響を全く受けないということはないものの、従来に比べれば影響度合いは非常に小さくなるものと予想されます。

 ここ数年の間に、世界経済の成長の大半は新興国によってもたらされるようになっており、多国籍企業の収益もこうした国々から得られる割合が急激に高くなっています。従って、たとえ米国の景気がいっそうの減速となっても、それほど収益は悪化しない可能性が高いですし、世界経済全体で見たら「絶好調」ではないにせよ、まずまず「堅調」という状態が維持される可能性は十分にあります。

金融緩和が株式市場を下支えする
 また、世界経済全体が堅調を維持する可能性が高いことに加え、米国を初めとする世界の金融当局が今後は金融引締めを解除し、緩和方向に動く可能性が高まっているのも追い風です。

 米国では既に年内に3回の利下げがあることがほぼ織り込まれています。長期金利はそれを織り込み既に今年の春先の水準まで戻っていますが、今後景気がさらに一段の減速をした場合には、より大きく金利を下げる可能性が極めて高いです。金融当局がもっとも気にしていたインフレも景気減速とともに懸念が減ってきており、コンセンサス以上に金利が下げられる可能性は十分にあるでしょう。これは間違いなく株式市場の下支えになります。

 また、日本ではつい1ヶ月ほど前までは今後も利上げが粛々と続き、2年後には短期金利が1.5%程度まで引き上げられることが確実視されていましたが、おそらくそうした一本調子の利上げは難しくなってくるものと予想されます。欧州でももうしばらく利上げが続くと予想されていましたが、しばらく行われなくなる可能性が出てきていますので、いずれにせよ金融政策は世界的に株式市場にとって追い風になってきています。

 以上を総合すると、株式市場はそれほど悲観すべき局面ではないと思います。ただ、景気自体は「堅調」であるものの「減速局面」であるのも間違いないところです。こうした局面で年率二桁%で上昇する可能性も少ないと思われますので、株式市場も景気と同様に「堅調」という表現がぴったりくるくらいの上昇となるものと予想しています。セクター的には「米国の個人部門」向けの業種はできるだけ避けることをお勧めします。「グローバル化」、「新興国の発展」の恩恵を受ける、資源、素材、インフラ系の株がやはり今後も好調になるのではないかと予想しています。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿