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サブ・プライム問題は今後どう収束する?


金融市場を大きく動揺させた「サブ・プライム問題」がもたらしたもの、そして今後為替市場がどうなっていくかを考えてみましょう。






サブ・プライムがもたらしたもの−株安、円高、ドル高、債券高
 ここ1ヶ月ほど、金融市場は「サブ・プライム問題」一色でした。サブ・プライムについてはもう説明の必要がないほどに世間に知られていると思いますので、ここではまずどうしてこの問題であれほど市場が動揺したのかを振り返ってみます。

 今まで起きてきたことを一言で言えば、「疑心暗鬼による強烈なリスク回避の動き」です。少なくとも今のところは、世界の景気が急におかしくなっているということもありませんし、米国の景気に何か重大なリスクが急に出てきたわけでもありません。ただ単に「サブ・プライム住宅ローン」という非常に限定的な金融商品の焦付きが増え、結果として一部の金融機関が破綻したり、多くの金融機関がそれなりの損失を計上したりしている、というだけです。しかもよく言われているように、それは経済全体から見れば取るに足りない規模です。

 ただおそらく、あまりにもこれまで「金融市場のリスク」というものが顧られなかったため、この程度のショックが猛烈に「リスクに対する感覚」を呼び起こしたのでしょう。欧米の銀行間市場では、どこかの銀行がいきなり破綻するかもしれないという疑心暗鬼が渦巻き、中央銀行以外だれも他の銀行にお金を貸さない、という事態が実際に起こりました。この結果、リスクがほとんどない「短期国債」に資金が集まり、信じられないほど低い金利で取引されています。

 同様に、これまでリスクをほとんど気にせずに進められてきた「株高」「円安」「米ドル安」「高金利通貨高」「資源高」「新興国市場高」といった動きが、いっせいに巻き戻されました。世界の株式市場はいっせいに下落し、日経平均が17%も下落したのをはじめ、ほとんどの国で10%以上の下落となりました。円も対米ドルで約10%、対NZドルや豪ドルでは20%前後も上昇し、急激な円高となりました。4月以来急騰していた世界の長期金利もほぼ今年の3月くらいの水準まで戻りました。

リスク回避のその次は?「パニック」から「ファンダメンタルズ」へ
 ひとつ今回の動きの中で意外だったのは、米ドルが上昇したことです。今回の動きの発端は、米国のサブ・プライム問題であったはずです。にもかかわらず、米ドルは対円を除いてほぼ全面高になっています。筆者は、この「米ドル高になったという事実」は、今後の為替市場の動きを予想する上で極めて重要だと考えています。

 為替相場がどうなるかを見る前に、まずは金融市場全体の行方を考えてみましょう。今後の金融市場は、最初のパニック的なショックの局面を通過し、次の経済のファンダメンタルズに沿った動き、という局面に移行する可能性が高いです。強烈なリスク回避によりリスクの感覚が復活した今、ファンダメンタルズを無視した動きはおきにくくなります。

 そこで今までもっともファンダメンタルズが無視されていた市場を考えてみると、それはおそらく米国の不動産市場だったということになると思います。株式市場は確かに絶好調でしたが、そこには業績の裏づけがあります。P/E(※)等のバリュエーションを見ればそれほど割高ではありません。しかしながら、米国の不動産市場はやはり色々な証券化等に支えられて好調になりすぎていた可能性が高いです。もちろん、ここ1年半ほどの間、米国の不動産市場はそれなりの調整を見せてきましたが、調整がまったく不十分です。その最初の調整が、ここに来て表面化してきたサブ・プライム問題だととらえるのが良いと思います。米国の不動産市場は、おそらくこの先も悪化が続くでしょう。

 この結果、米国の景気はいっそうの減速を余儀なくされると思います。株式市場については一段と大きく調整するほどかというとそうでもないようにも思えます。今までのところ、世界的にいっせいに株式市場が下落していますが、ファンダメンタルズを考えれば最も悪いのは米国で、他の国はそこまでひどい状況になるとも思えません。つまり今後は、米国はかなり減速するものの、世界経済全体を見れば減速は緩やか、というかたちになると予想されます。そうなれば株式市場はそれほど下がらないと考えられるからです。

今後の為替市場はどう動く?
 さて、仮に世界経済が上記のように推移した場合、為替市場がどう動くかですが、まず円相場については緩やかに円安が続く可能性が高いと考えられます。あくまでも、株式市場が一段と急落し、足元のようなパニック的な動きが続く等ということがなければ、ということが前提ですが、ファンダメンタルズを考えれば長期的には日本の少子高齢化を反映して日本から海外への資金流出が続くでしょう。

 また、その際に米ドルがどうなるか、これが問題です。米ドルは今回のパニックの中で、確かにドル高に動きましが、これは、米ドルがこれまで他の通貨に対して売られてきたことの単なる反動なのか、それともファンダメンタルズを反映しているのかが今のところはわかりません。単なる反動と見ることももちろん可能ですが、「今後は米国が際立って景気が悪くなることから、米国の『過剰消費体質』が解消され、米国の輸入が減り、経常収支が改善するかもしれない」という見通しが米ドルを押し上げたと見ることも可能だからです。

 逆に、単なる反動なのであれば、今後は米国の金利がもっとも低下する可能性が高いので、素直にドル安が再開すると見ることも可能です。ただ、米国が政策として経常収支改善のためにドル安を望むことも考えられます。現状では、色々なシナリオが考えられすぎて、米ドル相場がどう動くかを予想するのは極めて難しくなっています。

 米ドルは重要な岐路に立っています。今回の調整で「行き過ぎた円安」はある程度解消されている可能性が高いと見ますので、外貨投資を積極的になさろうとお考えの方は多いと思います。その際には、こうした局面で私たち投資家ができる最大のリスク回避策は「分散投資」だということを、よーく肝に銘じられることをお勧めします。米ドルの行く末が不透明ですから、今後はますます色々な通貨に分散するのが良いでしょう。

※P/Eとは
株価を1株当たりの利益で割った値のこと。P/Eは一般的に株価が利益に対して割安な場合は低く、逆に割高な場合は高くなります。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿