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「分からないことだらけ」で株式市場急落?
株式市場急落の理由について、メディアでは「米国の不動産問題」とあちこちで言われていますが、本当にそれだけなのでしょうか?
サブ・プライム問題で株急落
株が世界的に急落しています。日経平均株価は高値から1,000円以上も下げ、17,000円そこそこまで戻ってしまいました。またNYダウ平均も14,000ドルから13,300ドル程度まで下げています。
理由は、既にメディアなどで言われ続けていますが「サブ・プライム問題」がいっそう広がりを見せたことです。市場ではサブ・プライム・ローンの焦げ付きが相次いでいるため、様々な金融機関が損失を計上する旨を発表している中、なかには巨額の損失を隠している会社があるのではないかという疑心暗鬼が渦巻いています。また、多くの金融機関が損失を計上する結果、今後ますます住宅ローンを貸し出す姿勢が厳しくなるのではないか、それによって不動産市況がさらにいっそう悪化するのではないかという不安も高まっています。
サブ・プライム問題が既に経済に影響を与えているわけではない
読者の皆様の中には「ついこの前までは景気が好調だといってどんどん上がっていた株が、突然下げに転ずるのは変だ」という感じる方も多くいらっしゃると思います。たしかにその通りです。米国の景気指標は長い目で見れば減速が続いていますが、景気が減速している割には「底堅い」ですし、この数週間のうちに何か悪い指標が出てきたわけでもありません。にもかかわらず、株が急落するのはおかしいと感じられるのも無理はありません。
この疑問に対する答えのひとつは、「株式市場は先読みして動く」ということです。今はまだ景気に影響は出ていないけれども、そのうち金融機関の貸出姿勢の厳格化等を通じて不動産市況がいっそう悪化し、景気に圧力をかけるのではないかと思う人が急に増えたということです。
しかし、とはいっても景気指標にはそうしたことはまだ現れていませんし、巷ではサブ・プライム市場は住宅ローン市場全体のうちの1割強とごく一部だからそれほど広がりを見せないだろうという見方も有力です。また金融機関が損失を出すといっても、最近は株式市場が非常に好調で他の部門で利益がかなり出ていますので、いきなり赤字になるようなこともないだろうと考えられています。
とりあえずは「リスク回避」
筆者は、今回の株式市場の下げを実際に起こしているのは、一言で言えば「リスク回避」の動きだと思います。問題がどこまで広がるか「分からない」、金融機関がどれだけ損失を計上するのか「分からない」、最終的に景気にどの程度影響を与えるか「分からない」と、分からないことだらけなのが問題になっていますが、金融市場にとっては「分からない=不確実性=リスク」ですから、リスクの高まりにより相場が下げていると見るのがもっとも自然です。
株式市場以外の部分を見ると、長期金利が世界的に低下し債券相場が急回復していますし、今まで「ノー・リスク」で売られ続けてきた円が反発しています。金融市場全体が「リスク」に対して突如敏感になったのがここ数週間の動きといえるでしょう。
今後は「ファンダメンタルズの見極め」に焦点が移る見通し
さて、以上のように金融市場では突然、リスクに対する意識が高まっていますが、これはよくあることです。株式市場の下落幅も今のところは10%に満たない程度ですから、「上がりすぎの反動」、「ずっと続いてきた上昇相場の調整」の域を出るものではありません。たいてい「リスク回避」の動きが起きるときは「最悪」にかなり近いところをいったん織り込むのがパターンですが、今回の場合はそれほど下がってはいませんので、市場参加者の大勢は最悪なことがおきても、それほど大きな影響とはならないと考えているのでしょう。
今後の市場は、とりあえず市場が「リスク」として認めた米経済の減速が、実際にどの程度のものになるのかを見極める段階に入ります。このとき、仮に現在考えられているよりももっと問題が大きいとだんだん分かってくれば、より一段の株式市場の下げということになるでしょう。また逆に、やはりそれほど大きな問題ではないということになれば、再び上昇してくると思います。
ただ、いずれにせよこうした経済の実態、いわゆるファンダメンタルズがどうなっているのかを見極めるにはかなり時間を要します。とくに、今回のサブ・プライムの問題は「不動産」というもっとも流動性の低く、値段の透明性が低い市場に関連したものですから、実際にどの程度の影響が出るのかを見極めるには通常以上に長い期間を要するものと考えられます。
そう考えると、今後は様々なニュースに一喜一憂し、相場が乱高下する展開が予想されます。また、しばらくの間は実態としてどれほどのことが起きているのかが不明な状態が続くと考えられますから、ここ1ヶ月ほどの相場と同じく、長い目で見ると横ばいのレンジ内の推移となるかもしれません。重要なのは「最終的に」どの程度の影響があるかです。筆者は個人的には一般的に認識されているよりも、かなり大きな影響が最終的にあると考えていますが、まだまだどうなるかが見えないところです。ウォッチを続けましょう。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿