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為替市場に影響与えるサブ・プライム問題って
為替市場をにぎわせている「サブ・プライム問題」ってご存知ですか?2月の世界同時株安に続き、今回もまた・・・。どこまで深刻な問題なのでしょう。
為替市場も揺るがし始めた「サブ・プライム問題」
7月10日(火)の海外市場では、久しぶりに為替が大きく動きました。円/米ドル相場は123円台から121円付近まで2円以上の円高ドル安、ユーロ/米ドルも1.36付近から1.375まで一気に上昇し最高値を更新しました。
この急速なドル安の原因を特定することは難しいのですが、状況証拠としては、日銀の政策決定会合を2日後に控えた円売りの利食いに、日本時間の夜10時ごろに発表された「S&P社が612ものサブ・プライムMBSの格下げ方向で見直す」というニュースが拍車をかけたことが考えられます。
この「サブ・プライムMBS」というのは、2週間ほど前に話題になった「ベア・スターンズ傘下のヘッジファンドが運用失敗で救済」という問題の原因となった商品とほぼ同じものです。サブ・プライムはもう新聞等でもかなり語られていますので、「米国の低所得者や既に多額の借り入れを行っている個人向けに高利で行う住宅ローン」であることはおなじみかもしれません。ここ1年半ほど続く住宅・不動産市場の低迷により、焦げ付きが増えているため様々な問題が発生していますが、今年の2月の「世界同時株安」を引き起こした要因のひとつでもありました。最近の状況は、この問題が尾を引いているというより、ますます深刻化していることから、ついに為替市場にも影響を与え始めたと見ることが自然ではないかと筆者は考えています。
世界同時株安、株式市場の上昇ストップ、米ドル安・・・
サブ・プライム問題は2月の世界同時株安を引き起こしましたが、当時は基本的に「この問題は米国の金融業界全体の中のほんの一部の問題であり、仮に住宅・不動産部門にさらに一層の悪影響を与えたとしても、そもそも住宅・不動産部門も米国経済の中のほんの一部であるから、結局大勢に影響はない」という見方が一般的でした。このため株式市場の調整も一時的なものに終わり、その後は一段と上昇が続きました。
債券市場でも、サブ・プライムは取るに足らない問題なので米国経済の底割れは回避されると見られ、長期金利が6月上旬にかけて急騰しました。為替市場でも、米ドルも堅調な推移が続き、4月から5月にかけては対欧州通貨やオセアニア通貨で米ドルが上昇していました。
しかしながら、ベア・スターンズの問題が出てからは流れが変わってきています。株式市場の上昇は完全に止まり、金利上昇も止まりました。米ドルは再び下落傾向が強まってきています。
問題がどこまで深刻なのかわからなくなってきた
サブ・プライム問題が再燃しているのは、この問題がいったいどこまで深刻なのかがよく分からなくなってきたことが原因です。というのは、この住宅ローンは焦げ付きが明らかに増えているものの、それをあまり認識しなくてもいいような「からくり」があるのです。その「からくり」が、ベア・スターンズの時に問題になった「CDO」、今回S&Pが格下げ方向で見直しを行う「MBS」といった商品です。
これらの商品は流動性が低く、売買があまりないため、実際の価値はほとんど分かりません。また、よほど大きな焦げ付きが発生しない限りは、多少の焦げ付きはだれか他の人が被ってくれて、こうした商品を持っている人には損失が発生しないという仕組みにもなっています。その代わりに、CDOやMBSは本来15%以上のリターンが期待できるところを、利回りを7%程度に抑えられているのが一般的です。
CDOやMBSを保有している人は、これまでは焦げ付きがそれほど大きくは増えていなかったこともあり、リスクをほとんど認識せずに保有してきました。ただ、次第に焦げ付きが増えてきたことから、その影響が実際にCDOやMBSにも出始めており、そうした運用を積極的に行うヘッジ・ファンドの中には、救済を受けなければ投資家にお金を返すどころか、投資家に投資資金以上の損をさせることになりかねない状態になってきたというのがベア・スターンズ問題の本質です。
さて、いずれにせよこの問題はどの程度深刻なのか、しばらくの間はわからないものと予想されます。最悪の場合は、バブル崩壊後の日本の銀行の不良債権とまったく同じ構造で、「流動性が無いので本当の価値が分からない」、「分からないから放っておく」、「放っておいたらどんどん問題が深刻化してくる」という悪循環になる可能性があります。こうした状況では、いずれ米ドルは売られやすくなることが予想されます。
円については、米国経済がおかしくなっても世界経済全体が好調を維持できる程度でしたら、今後も円安傾向は続くと思います。対米ドルでは米ドルが下落圧力を受けることからそれほど円安にはならないでしょうが、欧州通貨やオセアニア通貨に対しては円安が続くでしょう。
しかしながら、サブ・プライム問題が深刻さをさらに増し、株式市場が世界的に下落してくるようになると話は別です。円の全面高のリスクも考えなければならなくなるでしょう。サブ・プライム問題の深刻さ加減が、為替相場に大きく影響することになると見ています。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿