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進むドル安、
米国経済の影響力低下が原因か
米ドル安が進んでいる一方、他地域はそれなりに好調の様子。米国経済が世界経済に与える影響力、実はそれほど大きくないの?
米ドル安が目立つ展開に
為替市場では米ドル安が進んでいます。読者の皆様も、ドル/円レートが118円〜119円程度と今年2月頃と比べると円高水準なのにも関わらず、豪ドルやNZドルは2月の水準をとっくに抜けており、1997年の1ドル=140円だった頃の水準に迫るところまで上昇していることにお気づきの方が多いでしょう。その他、ユーロも160円を超えて最高値を更新していますし、英ポンドも対ドルで26年ぶりの水準に達しています。
米国経済が冷え込んでも他の国への影響は小さい?
足元で米ドル安が進行しているのは、経済のグローバル化により米国経済の影響力が相対的に小さくなっていることから、今後仮に米国経済が冷え込んでも世界経済全体は好調を維持できる、という見方を市場参加者が強めているためです。
確かに昨年から、米国経済において住宅・不動産部門の冷え込みが先導する形で景気減速が著しいにもかかわらず、欧州経済はますます好調ですし、アジアの景気も中国の好調に牽引されて予想されていたよりもかなり良い状態が続いています。
こうした状態が続いていることから、米国経済が今後冷え込んで利下げが実施されるようなことになっても、欧州等の他地域はそれなりに好調を維持するため利上げを続けることになり、米国の金利に魅力がなくなり結果として米ドルが下落するのではないかという意見が増えています。これが足元の米ドル安の原因です。
G7でも「世界経済は大丈夫」という見方
こうした「米国経済が軟調でも世界経済全体は大丈夫」という見方は、先週末(4月14日から15日)米ワシントンで開かれたG7(7カ国財務・中央銀行総裁会議)でも大勢を占めていたようです。
G7と同時に開催されたIMF(国際通貨基金)総会で発表された2007年の経済見通しによれば、米国経済の今年の実質成長率は2.2%、ユーロ圏と日本はそれぞれ2.3%、世界経済全体は4.9%となっています。これを昨年(2006年)と比較すると、米国は3.3%でしたから2007年はかなりの減速となりますが、一方でユーロ圏は2.7%、日本は2.2%でしたからそれほど大きな変化ではありません。また世界経済全体でも5.4%でしたから若干の減速で、まずまず好調が維持されるという見通しです。
これは世界の政策当局者も、米国経済がある程度冷え込んでも世界経済全体は堅調と見ていることを示しています。
政策当局は依然としてインフレを懸念
さて、通貨当局者はこうした見通しを踏まえた上でもなお、現在の最大の懸念は依然として「インフレ」だと主張し続けています。これは景気減速が顕著な米国でもそうですし、景気が好調な欧州でも同じです。また消費者物価の上昇率がマイナス圏内に入ってきている日本でもまったく同じです。米国経済が減速しても世界経済がなお好調を維持できるのであれば、引き続きインフレを警戒しなければならないというのが、当局者のコンセンサスのようです。
しかしながら、さすがに米国はどんどん利上げをしていくという状態ではなくなっています。景気が予想以上に減速するリスクを無視できないからです。にもかかわらず米国は2008年には2.8%成長まで回復と予想しており、景気の底割れは回避できるという自信を持っています。このため、すぐに利下げに転ずる必要はなく、現在の金利水準をしばらく維持することがもっとも適切と考えているようです。
米国が冷え込んでも本当に世界経済に大きな影響はないのか?
しかし、筆者は政策当局者の見方に違和感を覚えています。筆者は、仮に政策当局者の見通し通りになれば、米国民の輸入が抑えられ、米国から世界各国への輸出が増えることから、米国の対外赤字は改善し、ドル高になる可能性もあるのではないかと考えています。現在の米ドルの水準は既にかなり割安です。これ以上ドル安になるためにはもっと大きな要因が必要です。
たとえば、仮に本当に米国の影響力が相対的に小さくなっているならば米ドル安要因になるでしょう。米国経済が崩れても欧州や中国の好調で世界経済全体が好調を本当に維持できるのであれば、米国経済や米ドルに対する依存は今後ますます小さくなるでしょう。これは明らかにドル安要因です。
ただ筆者は、ある程度米国経済の地位低下がよりいっそうのグローバル化へと進んでいる面はあれど、現状ではまだまだ世界経済の米国依存は大きいと見ています。確かに欧州は東欧への拡大によるダイナミズムが見られており、米国という大市場から逆風が吹いてきても影響が小さくなる方向に動いていますが、これはまだ始まったばかりです。また中国を初めとするアジア経済はまだまだ米国依存が強く、米国経済減速の影響は依然としてかなり強く受けることになる可能性が高いと見ています。中国の対米黒字は拡大を続けています。
筆者は、おそらく今年の前半は米国の減速が目立つ一方、他地域は好調であるという状況がさらに強まると見ています。そして後半は、米国経済が本格的に減速するに従ってその影響が波及し、結局世界経済は現在予想されているよりも冷え込み、米国の地位低下もそれほどでもなかったということが明らかになってくる可能性が高いと見ています。為替相場ももうしばらくは米ドル安が続くと思われますが、それほど長い間は続かないと考えています。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿