2007. 3. 5
ついに日銀が利上げ、でも為替相場は「冷静」

 2007. 2.26
日銀による利上げの目的は「円安是正」?

 2007. 2.19
日経平均18,000円超えの条件は?

 2007. 2.13
もうすぐG7、為替市場にどんな影響がある?

 2007. 2. 3
今って円安バブル?破裂するとどうなるのかな

 2007. 1.29

 2007. 1.19
景気軟着陸なら株はまだまだ上昇の余地あり

 2007. 1.16
景気が良いのに円安の不思議、原因は日本株?

 2007. 1.12
2007年為替市場のテーマを大胆予測

 2007. 1. 4
為替市場の日本に対する期待は弱すぎないか?

 2006.12.25
動き出した為替市場、でも円安はまだ続く?

 2006.12.15
世界的な株式市場調整中は引締め過ぎが原因?

 2006.12.11
3ヶ月ぶりに突然の円高、いつまで続く?

 2006.12. 5
「松坂大輔に60億円」から為替相場を考える

 2006.11.28
安定の為替市場、この先は米景気の影響が鍵

 2006.11.17
最近の株高、持続のポイントはどこ?














利上げ騒動渦中の日本、
世界からは不信感?


日銀の利上げをめぐる報道が二転三転する中、市場からは日本への不信感が高まっています。この不信を払拭できなければ、円安はとまらない?






日銀の利上げは?
 日銀の利上げを巡る報道が非常に激しくなっています。利上げの有無は18日(木)に決定されますので、この原稿を書いている時点ではどちらに転ぶか分かりません。しかしながら報道は二転三転しており、国内債券市場はそれに右往左往しているような状況です。
 一方、為替市場では粛々と円安が進み、ドル/円相場は足元では昨年1度も到達しなかった120円台まで円安が進んでいます。昨年末の急騰の反動で、一時円高に傾いていた米ドル以外の通貨に対しても円安が進んでいます。

市場参加者は冷静に利上げを織り込んでいた
 これまでの経緯を見てみましょう。日銀が金融政策を引締め方向に転換したのは、昨年の3月に「量的金融緩和政策」を解除したところからです。日銀は次に7月に6年ぶりの利上げを行い、政策金利を「ほぼゼロ」から0.25%程度に引き上げました。この時には既に米国の利上げは終了しており、「なぜ今頃になって利上げを行うのか」という疑問が国際的にもあったのは事実です。しかしながら日銀は、非常に長い目で考えれば、景気がそれなりに回復してきた今、ゼロ%という低金利政策を続けることは将来的にバブルを生みかねないと危惧し、金利を引き上げたのです。

 その後日本経済は、8月の消費者物価指数の大幅下方修正でデフレ脱却に対する疑念を持たれ、徐々に期待が落ちてきました。「日銀の大幅利上げはない」という見方が強まり、円安が進んだのもこの頃からです。ただ、世界経済は予想されていたよりも堅調で、日本経済もそれほど好調ではないながらも底堅い動きを続けました。これを見て日銀は12月に利上げを真剣に検討しましたが、このときは日本経済に勢いがあるという決め手となる証拠がないということで一旦利上げを見送りました。

 この間、債券市場の参加者は日銀の「非常に長い目で見た場合のリスク」に理解を示し、冷静に利上げを織り込んできました。年初の休日中には複数のメディアから(おそらく日銀のリークと思われる)「日銀が利上げへ」という報道が出され、一時は利上げ確率80%程度となる水準まで金利が上昇しました。

政府・与党の凄まじいまでの日銀攻撃
 しかしながら、こうした動きを牽制したのが政府・与党の動きでした。なかでも最も過激であったのが中川秀直自民党幹事長で「議決延期請求権」、「日銀法改正」といった「禁じ手」とも言えるような手段に言及して強く利上げを牽制しました。その他の人々も多くが「金融政策は日銀の専管事項」、「日銀の独立性を尊重する」としながらも利上げを望まないスタンスをにじませました。

 こうしたこともあって、17日未明から「日銀が利上げ見送り」という年初とは逆の報道が複数飛び出すことになりました(これは政府側からの情報と見られます)。これにびっくりしたのが債券市場で、17日の国内債券市場では利上げ確率が一気に30%くらいまで引き下がりました。ただ今のところそれでも債券市場は冷静で、数ヶ月以内の利上げ実施は依然織り込んでいます。

やはり日本は「普通ではない」という海外からの評価
 こうした事態の中、為替市場では粛々と円安が続いていますが、これはおそらく「日本に対する不信」が最大の要因ではないかと思えてなりません。

 第一の不信は「そもそもなぜ日銀は今ここで利上げをやりたがっているのか」があまり明らかになっていないことです。日銀は「フォワード・ルッキング」という言葉を多用し、「長い目で見た場合のバブル発生リスク」を気にしています。しかしながら足元の指標を見る限り、インフレ率はいまだ非常に低く、本当にそうしたリスクがあるのかは不明です。この点については日銀内部でもまだ議論が続いています。ただ、筆者を含めた市場参加者の中でも意見が分かれていますが、債券市場の動きを見る限りは日銀に理解を示す人が多くなっているは確実だと思われます。

 しかしながら、これが第二の不信点ですが、政府・与党にはどうもそれを理解している人が少なく、中川幹事長のようにまったく理解していない人がいるのも明らかになりました。これは一国の政策運営としては非常にお粗末です。日銀の政府・与党に対する説明が足りないのか、そもそも政府・与党に理解するだけの能力が備わっていないのかは分かりませんが、いずれにせよ日銀と政府・与党間の対立が激しすぎます。

 第3の不信は、日銀側も政府・与党側もこうした激しい対立が公になることが日本に対する不信を招くということをまったく理解していないということです。今回の対立は両サイドそれぞれがメディアにリークしている可能性が高く、それがまるで「劇場」のように中身のやり取りが伝わってきます。リーク合戦が不信を招かせるだけということを全く理解していないことも大問題です。

 さて繰り返しになりますが、この原稿を書いている時点では日銀が利上げを行うのかどうかは定かではありません。しかしながら日本に対する不信は確実に強まり、これが為替市場で円安要因になっていることはほぼ確実だと思われます。こうした不信はすぐには払拭されません。もはや「構造的」といってもよい円安要因があるということを、私たちは肝に銘じたほうがよいかもしれません。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿