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為替市場の日本に対する期待は弱すぎないか?


日銀が利上げ見送りを発表しました。為替市場は、見送りは当然と反応しませんでしたが、これって日本に対する期待が弱すぎませんか?






利上げを見送った日銀
 注目された19日(火)の日本銀行の政策決定会合では、利上げが見送られました。先週の当コラム「動き出した為替市場、でも円安はまだ続く?」でもお伝えしたとおり、最近の日銀は「日本経済の現状は期待はずれなのではないか?」という市場参加者の声が高まる中で、「フォワード・ルッキングなリスクを考慮して」利上げに対する姿勢を非常に積極的に見せていたのですが、結局今回は利上げを見送りました。

 ここでいう「フォワード・ルッキング」とは、「将来を見通した場合の」という意味で、「今のところはそれほどでもないかもしれないけれども、今後このまま景気が順調に推移すると過去の超低金利の効果が突然現れて、株・不動産などの資産バブルが発生したりインフレが発生したりする可能性がある」という「先行き見通し」のもとに利上げを行うとしていました。

 このため、日銀はここ数ヶ月ほどの景気指標が期待はずれであることは重々承知の上で、将来を考えればそろそろもう一段の利上げをしなければならないと考え、利上げを近々行う構えを見せていました。しかしながら、さすがに最近の情勢は日銀に待ったをかけるほどのものであったようです。

市場の反応は?株安、債券高も、為替は動かず
 日銀が利上げを見送ったこと自体はさておき、今回筆者にとって非常に興味深かったのは、利上げ見送りが発表された後の株・債券・為替それぞれの市場の動きです。

 まず、株式市場は下落しました。ニュースが伝わったのはその日の後場寄り前、つまり12:30の直前でしたが、前場の引け値で16,954円をつけていた日経平均株価は15:00の引けまでに16,776円まで下げました。この日は日興コーディアル証券の粉飾問題やタイ政府が資本規制を発表したといった大きなニュースもありましたが、タイミングから言って日銀の決定が後場の下げの主因であったのは間違いないと思います。

 ということは、株式市場は「日銀が景気に対して弱気だ」というニュースを、ネガティブ・サプライズと受け取ったことになります。つまり、株式市場の参加者は景気に対して多少強気に見ていたのが、日銀が弱気なのに驚いて、「売り」で反応したということです。

 また、債券市場は「金利低下」でした。これも株式市場同様に、日銀が弱気で金利を据え置いたことに驚いたことを示しています。債券市場の参加者はかなり利上げ実施を織り込んでいましたが、見送りになったことで「金利低下」で反応したのです。

 しかしながら、為替市場はほとんど反応しませんでした。ドル/円相場はわずか20銭動いただけで、この日は深夜に至るまでずっと117.90〜118.30の非常に狭い範囲の中での動きに終始しました(ちなみに、対ユーロ等では円安になりましたが、これはユーロ圏で予想を上回る好調な指標が発表されたことから、ユーロが対ドルでも対円でも一段高となったためです)。

なぜ為替市場の反応だけが他と違うのか?
 さて、本日のコラムの本題ですが、筆者はこの日の動きがまさに「為替市場の日本経済に対する期待が悲観的過ぎる」ことを意味していると見ています。株式市場も債券市場もそれほど強気ではないながらも、少なくとも為替市場ほどには日本経済の先行きを悲観視はしていません。日銀の利上げ見送りは多少なりとも「ネガティブ・サプライズ」だったのです。にもかかわらず、為替市場だけは「日本経済の先行きは弱く、利上げは見送られて当然」と考えています。これはおかしいのではないかというのが筆者の意見です。

為替市場の日本に対する期待は弱すぎないか?
 従って筆者の結論は「円は安すぎるのではないか」ということになります。為替市場における日本に対する期待が過剰に低くなっており、それにより円が安すぎる状態になっている可能性はかなり高いのではないかと思います。

 逆に、ユーロは高すぎるように思えてなりません。ユーロ圏は確かに足元の景気は好調で、なかなか減速に転ずる兆しを見せていません。このため、日に日に「仮に米国経済が本格的に減速してもその影響は軽微だ」という見方が強まっており、少々内容の良い統計数字が発表されるとユーロが上がるという循環になっています。しかしながら筆者の見方ではこれは楽観過ぎるように思えます。

 こうした結果、ユーロ/円レートは156円台にまで上昇しています。クリスマス・シーズンを控えて、ワインやシャンパン、プレゼント用のブランド品等をお求めになられた方は、昨年よりもかなり価格が上がっていることに気づかれたことでしょう。筆者がたまに口にするシャンパンも去年よりも20%近く上がっています。これからヨーロッパに旅行に行かれる方も円の弱さを実感することになると思います。

 来年の為替市場のテーマは、「どこでユーロ高円安の流れが転換するか」です。日本と欧州に対する期待は来年のどこかで反転する時がやってくると考えています。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿