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3ヶ月ぶりに突然の円高、
いつまで続く?
3ヶ月ぶりに、円が115円台前半まで動いています。不透明ながら理由はいくつか考えられますが、クリスマス・年末を迎える今後の市場に注目です。
突然の「ドル安」
11月22日(水)から23日(木祝)にかけて、為替市場が突然大きく動き、米ドル/円相場は21日(火)の118円台から2日間あまりで3ヶ月ぶりの115円台前半まで円高ドル安に動きました。
ただし、ユーロ/円は151円程度から史上最高となる153円近辺まで逆に円安に動きましたし、豪ドル/円も90円台で安定した動きが続くなど、円が上昇したのは対米ドルのみでした。ユーロ/米ドル相場も1.28程度から今年はじめて1.30を突破し、その後1.32まで上昇する等、ユーロ高ドル安ですので、為替市場全体の動きとしては急速な「米ドル安」が進んだというのが正確です。
相場が大きく動いた理由は経済指標か?
しかしながら、なぜこのタイミングでドル安が急に進んだのかは不透明です。確かに経済指標を見ると、ユーロ圏で23日に発表された「ドイツIFO指数」が予想を上回り、米国では22日に発表された「新規失業保険申請件数」が予想よりも失業保険申請者が多いことを示し、「ミシガン大学消費者信頼感指数」も予想よりも弱めでした。「米国経済が予想よりも悪い」、「欧州経済は予想よりも強い」という連想から「米ドル安ユーロ高」に為替市場が動いた可能性はあります。しかし、これらの指標はここまで大きく相場を動かすほど重要な指標ではありませんし、事前予想と大きく乖離したわけでもありません。これらの指標発表でこれだけ為替市場が大きく動いたと考えるのは、率直に言って困難です。
23日は日・米ともに祝日
そこで考えられるのは23日が日・米ともに祝日で、為替市場の参加者が極めて少なく、薄商いの中で大きな米ドル売りが持ち込まれた可能性です。この季節は12月末のヘッジ・ファンド等の投機筋の決算期末を控えて、年度の利益確定のために大きなポジション整理が行われることがよくあります。
あるいはここ数ヶ月、円・ドル・ユーロ間の相場が膠着していたので、その状況を打破するために「仕掛け」が入った可能性もあります。いずれにせよ、市場に大きなインパクトを与えるような経済指標の発表が見られなかった中で為替市場が大きく動いたのは、こうした投機的な動きのためであった可能性が高いのだと筆者は見ています。そのためこのままドル安が一本調子に続くかどうかは不透明です。
売りが売りを呼ぶ、買いが買いを呼ぶ可能性
ただ、このような大きな動きがあると、それ自体が市場をさらに大きく動かすこともよくあります。いわゆる、「売りが売りを呼ぶ」とか「買いが買いを呼ぶ」という現象です。
例えば現在、投機筋から個人投資家まで含め、市場参加者の見通しは「円安持続」一色だと見られます。これは日本のデフレ脱却見通しが怪しくなってきて、少子高齢化などの構造問題が、長期的に日本経済の重石になるとの見方が台頭してきたことが主因です。市場参加者のポジションは「円売り」が市場最高レベルに達しています。
このポジションは円が予想通り下落している間は何も問題ありませんが、いったん円高が始まると損失が発生することから、「円の買い戻し」による利益確定をする人が増えます。例えば「米国経済が失速し、ドル安圧力が高まるリスク」が急に台頭した場合、徐々に円買いが強まるはずですが、この円買い圧力は円相場を円高方向に動かすことから、買戻しが遅れれば遅れるほど損失が膨らむ循環に変わってきますので、円高が進めば「円買いが円買いを呼ぶ」展開となり、急激な円高となる可能性が出てくるのです。
ファンダメンタルズは「ドル高」か?
では今後、「円買いが円買いを呼び」、大きな円高ドル安になる可能性が高いのでしょうか?筆者はそうは考えていません。実体経済の状況が円高ドル安になりにくくなっているからです。
まず株式市場で、日本株が極端に他国の市場よりもパフォーマンスが悪くなっていることからも明らかなように、日本経済の状況は他国と比べてもかなり暗くなっています。既に内需は7-9月期のGDP統計によれば、消費が前期比マイナスとなっており完全に期待はずれの状況で、さらに今後は世界経済の減速により輸出も落ち込んでくる可能性が大です。こうした状況では内需もさらに落ち込むことが予想され、諸外国と比べると景気が暗くなり、これが円安の要因となることは確実だと思われます。
また、米国側にもドル高要因があります。米国では経常赤字問題がかなり深刻で、これが構造的な「米ドル不安」の素となっていますが、来年はどうも米国の赤字が縮小する可能性が高くなっています。これは足元の欧州経済の好調、米国内需の落ち込みによって米国から欧州への輸出が増え、米国民の輸入が減ってきているためです。現在、米国景気の落ち込みがドル安につながるのではないかという意見が強いですが、意外にも経常収支の改善によりドル高になる可能性もあるのです。
以上のように考えると、少なくとも実体経済からは、一本調子の円高ドル安反転は考えにくいところがありますが、「買いが買いを呼んで」予想以上の円高となる可能性も確かにあります。12月の中盤から後半にかけては投機筋の決算に加えて、クリスマス休暇による薄商いも手伝い、市場が大きく変動しやすくなります。どちらに動くかは今のところなんともいえませんが、意外なほどに一方向に動く可能性もあるでしょう。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿