2006.12. 5
「松坂大輔に60億円」から為替相場を考える

 2006.11.28
安定の為替市場、この先は米景気の影響が鍵

 2006.11.17
最近の株高、持続のポイントはどこ?

 2006.11.14
米ドル対円、今後の動きは日本のふんばり次第

 2006.11. 7
回復の兆しを見せるNZドル、その背景は?

 2006.10.30

 2006.10.20
進む円安の原因は日本株式市場の弱さ?

 2006.10.17
日本経済イメージダウンは為替にどう影響?

 2006.10.10
米長期金利低下で景気悪化か?為替への影響は

 2006. 9.26
金利低下、原油安は株に有利?それとも不利?

 2006. 9.19
円の価値、この10年で4割も下落している?

 2006. 9.11
日本の長期金利は急低下、しばらく円安傾向か

 2006. 9. 4
為替市場で目立つのは予想以上の「円」の弱さ

 2006. 8.28
予想以上の成長率、ユーロ円上昇はどこまで

 2006. 8.25
米の利上げ休止は世界の株式市場にどう影響?

 2006. 8.21
米国の利上げ休止で、今後注目の為替商品は?














北朝鮮の核実験、
為替市場反応ナシはなぜ?


北朝鮮の核実験は世界各国にとっては大事件のはずですが、金融市場はほとんど無反応の状態です。このことから、今後の円の動きを予測してみましょう。






北朝鮮の核実験
 10月9日(月)、「北朝鮮が核実験を実施」というニュースが飛び込んできました。この事態を受けて国際社会は14日(土)にも国連安保理で制裁決議を行いました。今回は「北朝鮮の後ろ盾」とも言うべき中国も今までにない厳しい姿勢をとっており、既に北朝鮮への送金停止や貨物検査の強化といった措置をとり始めています。

 北朝鮮の核実験が成功したのか失敗したのかは今のところ不確定なようですが、いずれにせよ世界で公式に「核保有」を認められていない国が保有することを宣言したわけですから、これは大事件です。世界の中で核保有が認められているのは安保理常任理事国である米・露・中・英・仏の5大国と、その後さまざまな紛争の紆余曲折を経て保有に至ったインドとパキスタンを加えた7カ国のみです。ここに北朝鮮という世界でももっとも体制的に危うい国が加わるとなれば、これは世界にとっての一大事のはずです。

金融市場はほとんど反応せず
 しかしながら、この事態に金融市場はほとんど反応しませんでした。もっとも影響を受けるであろう韓国では、当日こそ株式市場(KOSPI指数)が2.4%下落しましたが、その後回復して既に事件の前の水準まで戻っています。日本株はまったくといっていいほど影響がありませんでした。また、為替市場を見ても韓国ウォンや日本円が若干影響を受けて下落したものの、それほど長続きはせず、足元では回復に向かっています。

 このように金融市場がほとんど反応しなかったのは、「核実験が成功しなかった可能性もあるから」といった解説も聞かれますが、筆者はそうは思いません。実験は何回かやればいずれ成功するでしょう。しかも、なにせ日本の上空を超えるようなミサイルを飛ばすような国です。いつ何をするのかわからない、まさに「リスク」の塊のような存在がネガティブなことを行ったのですから、これほどまでに何も金融市場が反応しないのは不思議です。

欧米に関係ない「地政学リスク」はリスクにあらず?
 今回金融市場がほとんど反応していない最大の理由は、おそらく北朝鮮が欧米から地理的にも戦略的にも遠すぎるため、欧米投資家の間では「リスク」としてほとんど認識されていなかったためと考えられます。欧米の投資家は中東情勢には非常に敏感で、イランでもネタニヤフ大統領が盛んに米国を挑発し核開発を行う姿勢を鮮明に打ち出していますが、欧米は彼を非常に目の敵にし、金融市場もその動きによく反応します。これは中東の石油の権益の問題もあるでしょうし、オイル・マネーに欧米諸国がかなり依存していることも関係しているでしょう。

 それに対して北朝鮮はとくに経済的に重要な地域ではないと見られているようです。確かに北朝鮮は小国で貿易相手としては重要ではありませんし、仮に北朝鮮がミサイルを飛ばしたとしても欧州には到達しませんし、米国でもせいぜいアラスカかハワイに届くのみですから、それほど危機感がないのでしょう。

東アジアの経済力が軽視されている可能性
 筆者は、欧米投資家には重大な認識の間違いがあると思います。世界銀行によれば日本が世界のGDPに占める割合は現在約13%、中国が6%、韓国・台湾・香港・シンガポールが4%、ASEAN2%と、合計で25%もあります。この地域が不安定になれば当然世界全体に影響を与えるはずです。

 欧米投資家は、どうもここ数年の世界的な景気拡大に東アジアの発展が相当に寄与しているという実感が、いまいち持てていないようです。このため、仮に中国経済が引き締め政策の効果によりかなり減速する場合、それがどう世界経済全体に影響を与えるのかがつかみきれていません。

東アジアの金融市場が欧米投資家主導になっている可能性
 また、日本の株式市場や韓国の株式市場、また円や韓国ウォンといった為替市場で欧米投資家依存がかなり大きくなっており、国内の投資家は欧米の投資家の動向を見ながらでないと動けなくなっているという可能性もあります。

 このところ日本株の上昇が目立っていますが、上昇率の高い銘柄のほとんどが欧米投資家の好む「国際優良・大型株」であることがその裏づけです。欧米の株式市場は日本株に先駆けてかなり好調になっていましたが、その好調により日本にも資金を振り向ける余裕ができ、それによってこうした株が日本で買われている可能性が高いです。国内投資家が好む中・小型株はまだ下落が続いていますので、国内の投資家は欧米投資家についていくことしかできないような状況になっていると想像されます。

 また為替市場でも、国内投資家が北朝鮮の事態を受けて一旦は円やウォンを売ってみてみたものの、欧米投資家がついてこず、どうも思ったよりも円やウォンが下がらなかったのでやめてしまったのかもしれません。

 筆者は、今回、欧米投資家が円をあまり売らなかった可能性があることに注目しています。彼らが円に弱気なままでいるならば、今回の北朝鮮の核問題は恰好の円売り材料です。円高反転のタイミングはかなり近いのかもしれません。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿