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儲かっても寡黙であるべきはもう古い?
本屋に並ぶ株式投資の成功例が書かれた本ばかりを読んでいても勉強になりません。人の失敗例にこそ、学習すべき点がつまっているのです。
一時は過熱感のあった個人投資の“ブーム”も、最近は少し落ち着いてきたようにも見える。その意味では、“これから”投資を始めようと考えている人の方が、流行に流されず、じっくりと冷静に行動するタイプの人が多いとも考えられ、長い目で見れば、証券界はこういう投資家こそ大事にした方がいいのかもしれない。とはいえ、書店の投資関連のコーナーは、相変わらずの盛況ぶりのようである。最近では、いわゆる“玄人”ではない、一般投資家が書いた一般投資家向けの本というのも、人気を博しているようだ。主婦や大学生から芸能人やホステスさんに至るまで、そうした一般投資家に“カリスマ”や“神様”という称号まで付けられていることもあり、バブル期並みの華々しさである。やはり、専門家の高い目線から堅苦しいことを言われるよりも、同じ高さの目線で語られる“成功例”の方が親しみやすいということだろうか・・・。
そんな流行を妬むわけではないが、そうした書籍のタイトルなどを見ていると、古い時代の“玄人”投資家の一人として、少しいぶかしく思うことがある。“私は○○投資で××円儲けました!”という、最近よく見かける流行りのフレーズである。時代が変わり、投資家の趣向も変わったと言われればそれまでだが、儲かっても損しても寡黙であるべきと言われてきた古い時代の投資家にとって、自身の成果を自ら大々的に公表することなど考えられなかった。そうした自己顕示ともとれる言動は、匿名性の高いネットの世界ではよりエスカレートして現れる。ここまでくるともはや何でもありの無法地帯ともいえ、“○○で××円儲けました!”と書き込まれても、それ自体の信憑性を疑う方が自然であろう。
また、証券営業の現場に少しでも携わったことがある人にとっては、顧客に対して断定的表現をしないように、片サイドだけの説明(儲かる点だけを説明してリスクについての説明をしないこと)をしないようにと厳しく指導されてきたこともあり、そうした自己顕示の姿勢には、フィロソフィー(哲学)として抵抗感を持つかもしれない。
個人投資がブームと言われるほど活発になった理由として、インターネットの技術的な発達や、ネット証券の手数料引き下げ努力などがよく挙げられる。学術的・理論的にはそうした分析で正しいと思うが、一般大衆的に言えば、身の周りで儲かったという話をよく聞くようになった、すなわち儲かる期待が膨らんできたからこそ、皆が投資に興味を持つようになってきたに過ぎない。つまり、なんだかんだ言っても一般的には、こうした“成功例”の普及による影響が、実は一番大きいのである。
そうであるからこそ、こうした“情報”の受け取り手としては、よく注意をしておいてし過ぎることはないのである。情報の出し手と受け取り手には、常にアンバランスが存在する為だ。“成功例”を記した書籍が華々しく出版される一方で、“失敗例”を告白する書籍がほとんど出版されないのは本来アンバランスなことと言えるが、これが情報の出し手としての実情でもある。しかし、情報の受け取り手である投資家にとっては、そうした“成功例”だけを鵜呑みにするわけにはいかない。“光”の部分と“影”の部分の両面を、いやむしろ“影”の部分を積極的に知ろうとする姿勢こそが大切である。情報の出し手が“影”の部分の開示に消極的なのであれば、情報の受け取り手自らが、積極的に“影”の部分を見に行こうとするしかない。これこそがリスク管理のできた投資であり、簡単に騙されない頑健な投資姿勢につながるのである。
そうした上で大儲けしたとしても、その成果は心の中に留めておいてほしい。その方がかっこいいはず・・・と思うのは、やはり時代遅れの投資家だけなのだろうか。
外資系コンサルタント 円城寺真哉