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投資に役立つのは「武勇伝」より「失敗談」
若手お笑いコンビの『ぶゆーでん!ぶゆーでん!』というフレーズが人気だと聞いた。しかし投資の世界では、「武勇伝」より「失敗談」から学ぶことが多い。投資に絶対はあり得ないのだから。
近所の小学生達が下校途中、『ぶゆーでん!ぶゆーでん!』と言いながらふざけあっていたので、近頃の子供達は随分難しい言葉を知っているもんだなあと感心していたが、後から、最近人気のお笑いグループの真似だと聞いて、苦笑いするよりなかった・・・。
それにしてもここ最近は、日本の株式市場も活況ということで、様々なメディアで投資の“武勇伝”ならぬ成功談を目にする機会が多くなった。しかも昨今の投資ブームの影響か、言うなれば“素人さん”が投資の本を書いたり、講演を行ったりするようなケースも多く、またそういう方が親近感もあって人気があるのだという。バブル崩壊後の、株式市場が長らく低迷していた頃のことを思うと、こうした現象は非常に喜ばしい話ではあるが、ただ、一部に見られる過熱した状況には、少し不安を覚えることもある。
最も気になるのが、投資の成功者を“神格化”するような傾向が一部に見られることだ。“カリスマ投資家”や“伝説の投資家”など、メディアの宿命上、インパクトの強い見出しを付けなければならないこともあろうが、受け取る側としては話半分程度に、冷静に受け止めておくのが得策であろう。どんなに優秀な投資家であっても、全戦全勝はあり得ない。それができるのは本当の神様だけである。神様でない人間の投資家ができることは、全戦全勝ではなく、勝ったり負けたりするうちの、勝つ方の確率をいかに高めるかということだけである。“武勇伝”というのは、勝った方の話にだけ焦点を当てたものであるということを、よく理解しておいていただきたい。
このような当たり前に思えることを敢えて申し上げるのは、これらのことがかつては、プロの投資家達もハマった過ちだからである。せっかく一般にも根付いてきた投資を、一過性のブームで終わらせない為にも、同じ轍を個人投資家に踏んでほしくないのだ。そう遠くない昔、プロの投資家達の間でも、一部の人間を“神格化”しようとしたことがあった。ある者はそれに乗っかり、いい思いをした時期もあったのかもしれないが、大抵は最終的に破綻、共に憂き目にあうことになる。今ではプロの投資家達の間で、そうした“神格化”の傾向はほとんど見られない。“カリスマ投資家”というもの自体があり得ないということを、その時学習したからである。そうした学習の成果として生まれてきたものの一つが、リスク管理の概念であった。そこでは、『人間である限り必ず失敗はする。しかしその失敗した時の被害を最小限にコントロールできれば、逆に成功するチャンスが広がってくるのではないか・・・』というような論調が展開される。つまりプロの投資家達は、過去の失敗をしっかり省みることで、逆に成功への鍵を一つ手に入れることができたのである。
投資というリスク(変動、不安定さ)を伴う行為を行っている上で大切なことは、“武勇伝”という片サイドの話だけを聞くのではなく、もう一方の失敗談にも目を背けないことである。確かに、投資の入門のような時にはサンプルの一つとして、誰かの成功例は役に立つことがあるかもしれないが、ある程度経験を積んでくれば、むしろ失敗談を聞くことの方が実際には役に立つことが多いであろう。
さらに“武勇伝”といっても、あくまでも過去の、あるいはその時点までの成功談であって、これから先の成功の秘訣を教えるものでは決してないということも、よく理解しておいてもらいたい。もし本当にそんな秘訣があるのなら、神様のような徳のある人でない限り、他人に教えるはずはないだろうから。投資の世界は、数人の“武勇伝”だけで語り尽くせるほど単純な世界ではない。
外資系コンサルタント 円城寺真哉