2000.11.13
小型株投資の留意点(定性評価)

 2000.10.30
本格化する決算発表

 2000.10.23
活発な発行市場に低調な流通市場

 2000.10.16
ハイテク景気の行方

 2000.10. 2
日本のIT普及のあり方

 2000. 9.26

 2000. 7. 3
グループ経営のあり方‐その1‐

 2000. 6.26
割安株を考える

 2000. 6.19
割安銘柄への投資

 2000. 6.12
攻めの経営への転換点

 2000. 5.29
地価下落は株式市場にとって致命的か?

 2000. 5.22
ポートフォリオ構築のアプローチ

 2000. 5.15
荒れるマーケットで

 2000. 5. 8
3月期決算発表が本格化へ

 2000. 4.27
青歯王

 2000. 4.20
日経平均の銘柄入れ替え














良好な企業業績とリスク要因






 足元、日本株は軟調な展開が続いています。この主因は9月決算末を睨んだ持ち合い解消売りが背景にあると解説されています。確かに株式の需給関係を見た場合、今年度は都・長・地銀が持ち合い解消売りを約3兆円出すともいわれており、下期にかけて相場の頭を抑える要因と考えられています。これ以外にも株式需給を悪化させると見られているものの中に株価指数の銘柄および計算方法の変更があります。

□ 日経平均の定期入れ替え
  まず国内の株価指標として最もポピュラーな日経平均は、既に発表されているように、10月の定期入れ替えのほかに興銀、第一勧銀、富士銀の共同持株会社設立(22日に上場廃止)、DDI、KDDの合併(KDDが26日上場廃止)により、新たに、横浜銀、東洋信託、新光証券、アルプス電気が加わります。さらに10月2日には、毎年10月の第1営業日に構成銘柄を見直す「定期見直し基準」による入れ替えが実施されます。これによってみずほホールディング、セコムが採用され、鉄建建設、日本証券金融が除外されます。これは4月に改定された新ルールに基づくもので、流動性、セクターごとの銘柄のバランスなどを考慮し、市場実態をより適切に反映する目的で行われるものです。今回採用された銘柄は、除外銘柄に比べて額面換算の株価が高いため、既存の採用銘柄の売り要因になります。しかし、前回の4月の時には、指数の実質的な内容が半分以上変わってしまいましたが、それと比較すれば今回の売り圧力は全体の2-3%程度に留まるとみられ、マーケットへの影響は限定的なものに留まるでしょう。

□ MSCIが波乱要因になる可能性も
  むしろ筆者が懸念しているのは、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)世界株式インデックスの持ち合い株調整による影響です。この指数は全世界22カ国、1347銘柄(2000年6月現在)で構成され、世界の株式市場の時価総額の60%以上をカバーしている指数です。グローバルなアセットアロケーションを行うファンドのベンチマークとして最も利用されているものです。この指数の計算方法が変更になり、年末までに概要が発表され、来年にかけて実施されると見られています。詳しい内容は現時点では不明ですが、従来の100%時価加重方式ではなく、浮動株の時価総額をベースとした算出方法に変更されるようです。外資系証券会社の推定に基づく試算では、持ち合いの多い日本と欧州大陸の比率が低下し、米国と英国のウエイトは上昇、セクター別では通信株の比率が低下すると見られています。この指数をベンチマークにしている資金は公式な数字は発表されていませんが、世界全体で5000億ドル以上ともいわれており、そのわずか1パーセントが動くだけでも日本株に対して5000億円近い売り要因になります。
 
 これらの指数の影響はあくまでも計算上の話で、理論的には株式の所有者が変わるに過ぎず、株式のファンダメンタルズ、および本源的な株式価値を変えるものではないのですが、短期的な株価の波乱要因になる可能性があります。

□ 企業業績は好調持続
  98年に始まる上昇調整局面の踊り場にある日本株が浮上する前提には、企業業績の好調持続が必須です。9月に入り各証券会社のリサーチ部門が2000年度に入って2回目の企業収益見通しを発表していますが、9月上旬の時点では、2000年度の連結経常利益(金融除く全産業)は期初時点に比べて多くのリサーチ部門で上方修正されています。筆者が考えるマーケットのコンセンサスとしては、大体20%台後半の増益率で、今回は前回時点に比べて3-5%程度上方修正されている、といったところでしょう。
  今期の業績予想では、製造業の方が非製造業に比べて経常増益率が10%以上高くなっており、中でも電気機器セクターは最も寄与率(全体の増益額に占める割合)が大きくなっています。この寄与率を見ても40%以上がこの電機セクター一つにかかっており、やはりIT主導の企業業績回復の側面が見て取れます。
  個別企業で見ても、京セラ、村田製作所が8月末に今期予想を上方修正したのは記憶に新しいところです。これらは携帯電話向けなど情報通信向けの部品の需要が急拡大したことが背景にあります。一方で下方修正銘柄では、食中毒事件を起こした雪印乳業、子会社のファイアストンのリコール問題から特別損失を計上するブリヂストンなどがあります。このほか業績への影響は不透明な三菱自動車のリコール隠蔽問題も含め、最近上場企業の不祥事が相次いで表面化しており、潜在的な企業リスクの存在を認識させられるという点においては株式市場にとってネガティブに働くと考えます。

□ 米国ハイテク景気の行方
  今期の日本の企業業績回復がIT主導であることを考えると、米国のハイテク産業の動向が気に掛かるところです。特に携帯端末の需要拡大によって恩恵を受けて来た電子部品セクターがどこまで好調を持続できるかが当面の焦点になります。既に北米での携帯端末主導のハイテク景気には陰りが見えてきており、この材料から判断すれば、先行きは不透明感が強いと言わざるを得ません。
  この「携帯端末ストーリーの崩壊」を背景に日本のハイテク企業に対する見方を慎重にするアナリスト、ストラテジストは多いのですが、筆者は必ずしも弱気には考えていません。その要因の一つがもう一つの牽引役となってきたネットワーク機器需要は依然として堅調で、今後の需要予測はアップサイドのリスクがある点です。それにはネット革命は単なるブームでは終わらないだろうという考え方が背景にあります。
  我が国においては通信キャリアのインフラ整備、次世代携帯電話に向けた投資は高水準で推移することが見込まれ、通信機器需要も堅調に推移することが見込まれています。またデジタル家電のマーケットが立ち上がってきます。このデジタル家電はこれまで実態は大した市場規模ではない、という見方がマーケットの大勢のようでしたが、ここへ来てハイテク産業の牽引役の一つと言えるまで市場が出荷が増えてきたことを評価する動きが出てきました。例えば、DVDプレイヤー、DVD-ROMドライブ、デジタルSTB(Set Top Box,CSチューナーなど)がそれに当たります。中でもデジタルSTBはケーブルTVが普及している米国での市場の立ち上がりが早かったのですが、ここへ来て我が国でも普及が急速に進んでいます。
  これらの事実からは、米国ハイテク景気には危うさは見え隠れするものの、このセクターに対する見方を直ちにダウングレードするには時期尚早と考えています。


永尾完治