2000. 9.26
良好な企業業績とリスク要因

 2000. 7. 3
グループ経営のあり方‐その1‐

 2000. 6.26
割安株を考える

 2000. 6.19
割安銘柄への投資

 2000. 6.12
攻めの経営への転換点

 2000. 5.29

 2000. 5.22
ポートフォリオ構築のアプローチ

 2000. 5.15
荒れるマーケットで

 2000. 5. 8
3月期決算発表が本格化へ

 2000. 4.27
青歯王

 2000. 4.20
日経平均の銘柄入れ替え

 2000. 4.12
もはやバブル崩壊後ではない

 2000. 3.26
新年度を迎えて考える株式市場













地価下落は株式市場にとって致命的か?







□ 地価下落続く
 最近、地価の下落を指摘するエコノミストの論評を目にします。彼らの意見は「地価が上昇しないうちは景気は決して良くならない」といったものが多いようです。確かに3月24日に国土庁より発表された今年1月1日時点の公示地価よれば全国平均の公示地価は前年比4.9%下がり、9年連続で下落したとあります。公示地価がピークをつけた91年との比較では商業地は特に下落率が大きく、東京が▲72.0%、大阪は▲76.3%となっています。株式は89年の高値から日経平均でみればおおよそ▲67%位の下落ですから、いかにその下落率が大きいかがわかります。そこでは企業がリストラ(事業の再構築)の一環で資産売却を行なったことに加え、個人が雇用、賃金不安から住宅購入を控えたためと説明されています。

□  株式市場への影響は?
 それではこのまま地価の下落が続いて金融機関の不良債権が膨らみ、それが資産デフレに繋がり、今後株式市場へ悪影響を与えるのは避けられないでしょうか?筆者はそうは考えず、このニュースのマーケットへの影響はネガティブには捉えていません。その理由は地価下落の根拠になっている公示地価そのものの特殊性、地価の二極化、そして最後がもっとも重要なのですが、今後の株式を見る上ではフロー面を重視していること、の3つの根拠からです。

□  実態を表していない公示価格
  まずは地価の動向自体に目を向けてみますが、それには公示地価そのものの特殊性に注意を払う必要があります。つまり公示地価は必ずしも不動産マーケットの実態を表していない可能性があるからです。例えば従来の工場用地をマンションなど住居用に転用した場合は土地の利用状況が安定していないとみなされ、調査ポイントになりにくいことが知られています。最近売り出されているマンションなどではこういったケースが多く見られ、民間マンション業者の地価動向の実感と公示地価など統計との乖離の原因になっているようです。また地方では土地の取引が都心部に比べ活発でないため、実際に取引が成立するのは公共投資に絡んだ道路などの土地買収が多く、正確な民需による地価動向を反映したものではありません。これらの事実だけで全体の統計の信憑性について論議するのは早計でしょうが、少なくとも統計は鵜呑みにしてはいけないと考えるべきです。

□ 地価の二極化
  地価が下落基調というのは平均した場合のことで既に都心などの一等地では動きが見られています。すなわち株式市場と同様、地価にも二極化が鮮明になっているわけです。まだ東京都心の一部分に過ぎないのですが、前年比で横ばい、もしくは上昇に転じた地点が出ています。これは昨年まではあまり見られなかった現象です。これらの物件の共通点は「近・新・大」つまり大都市件の商業地で駅の周辺にあり、新築の大規模オフィスビルで、1万?以上の大規模オフィスビルです。これらの地点は空室率が低いことから土地がもたらす収益性は高くなり、地価は下げ止まっているわけです。もっともこれから都心部では述べ床面積で年平均120万?程度の大量供給が見込まれており、供給が増える事実はあるのですが、収益性で劣らない物件の地価は底堅く推移すると見ています。

□ フローの収益を重視
そしてこのことは株式市場に投資する際、ひとつのヒントを与えてくれるようにも思っています。つまりストック面ばかりに気をとられているとフロー面での改善を評価し損なう可能性があるのではないでしょうか。所謂オールドジャパン企業はバブル崩壊による負の遺産の処理に追われている企業が多いのですが、これらの企業は社員の福利厚生の一環として、また税金対策などから社宅などの施設を購入し、値上がりを待ってキャピタルゲインを基礎に含み資産を増やしてきたわけです。これらの資産は収益悪化した際のバッファーになっていたのですが、時価評価への会計制度の変更など含み資産経営が曲がり角に立っている現状では立ち行かなくなっているようです。また企業の合従連合の影響もあります。たとえば大手都市銀行については4つの企業連合に集約されるのですが、全国に数百はある支店がこれから閉鎖されます。これらの多くは駅前の好立地にあるものも多く、今後リストラが進めばまだまだこういった類の土地の供給は増えるでしょう。しかしながらこれらのストックベースの負の遺産ではなく、フローベースで収益を考えればマージンは改善してきているのも事実なのです。例えば都心ビルの空室率は99年9月末を底にして少しずつ上昇しているとの報告もあります。またIT設備を備えたインテリジェンスビルはむしろ品不足の状況になっているようです。地価が十分に下落したこと、また超低金利の継続で賃貸事業の採算はかなり改善していると思われます。当然、不動産会社の収益も不良債権の処理がある程度目処がたった大手はフローベースのバリュエーションから見れば割安圏内に入ってきていると判断することも可能です。そしてフローベースで収益力がついてくれば不良債権の償却はより一層加速できることにも留意すべきと考えます。同じことは大手都市銀行にも言えるようにも思います。ただしこちらのリストラ策の実施はまだ道半ばで必ずしもポジティブに評価できない部分も多いのも事実です。

□ 土地の流動化策
  今後この地価を巡る動きでは様々な攪乱要因が出てくることが想定されますが、その中で重要なキーになるのが土地の流動化策です。SPC法の改正で既に不動産の実物資産の証券化が行われていますが、今後は2000年中を目処に証券投資信託法の改正により、米国で「REIT」と呼ばれている不動産投資信託が始まり注目されています。SPC法は最初に不動産の特定しなければならない、資産流動化計画の提出しなければならない(不動産をいつ売却するかを事前に決めておく)、などの欠点を有していますが、このREITであればそれらの点は解決して弾力的な運用が可能になります。まだ税制面などの優遇措置がどうなるかなど不透明要素も多いのですが、今後、不動産取引を活性化させるとの期待がかかります。

永尾完治