2000. 6.19
割安銘柄への投資

 2000. 6.12
攻めの経営への転換点

 2000. 5.29
地価下落は株式市場にとって致命的か?

 2000. 5.22
ポートフォリオ構築のアプローチ

 2000. 5.15
荒れるマーケットで

 2000. 5. 8

 2000. 4.27
青歯王

 2000. 4.20
日経平均の銘柄入れ替え

 2000. 4.12
もはやバブル崩壊後ではない

 2000. 3.26
新年度を迎えて考える株式市場













3月期決算発表が本格化へ






□ 収益拡大シナリオに変化は加えない
  いよいよ3月期の決算発表が本格化してきました。株式市場の先行きを考える上でいつの場合でも企業収益動向は最重要のポイントです。まだ少数ですが、今まで発表された企業を見る限り、終わった期である2000年3月期については、来期より始まる時価会計の導入に伴い、年金債務などを前倒しで計上するところが多く見られ、マーケット全体で見ると当期利益については、下方修正になりそうです。したがってEPSによるバリュエーションでは、現状のTOPIXの水準は決算発表前と比べて割高になります。一方、2001年3月期について会社側は概ねマーケット予想の範囲内の見通しを発表している企業が多い様です。従って2001年の経常利益は10%から20%台の伸びが期待できそうです。この収益拡大でROEが改善し、4年後には適正水準と思われる10%台へ復帰するといった筆者が考える企業収益の中期上昇シナリオは依然として変更は加えなくて良いと思っています。

□ 総合電機の決算発表を受けて
 先週は日立製作所、東芝、富士通などの大手総合電機メーカー、ソニーなどの決算が発表になりました。これらの企業はそれぞれ3月に2000年3月期の業績修正を発表しており、その時に形成されたマーケットコンセンサスの数字と比べて、日立が上方修正、富士通、東芝はサプライズなしといった結果でした。これらの企業で共通していて今後のポイントになると思われるのが、電子デバイス部門の回復が鮮明になっている事実です。筆者にはこのセクターの収益モメンタムは時間が経つにつれてその強さを増して来ているように思えます。

□ 好調な電子デバイス
 例えば富士通については2000年3月期についてはY2Kの影響でコンピュータのハード、ソフトが共に大幅なマイナスになりましたが、2001年3月期については電子デバイス部門でASIC(特定用途向け半導体)などロジックや、フラッシュメモリ(注1)などが好調でこの部門の営業利益は前期の201億円から1150億円へ拡大することを会社側は見込んでいます。足元の状況判断でも半導体、電子部品の不足感は強まっているようです。ただし多くのアナリストがこの部門の予想数字については懐疑的な見解を示しています。まだ強気になるのは時期尚早で会社側の予想数字は楽観的過ぎると言うわけです。しかし筆者はアナリストの多くは現状の水準を重視するあまり、変化の大きい時期については保守的なバイアスがかかる性質を持っていること、セクター環境が依然として上方修正の方向にあることを考えると実現不可能な数字ではないという見方に与したくなります。むしろ株価を考えるにあたってはアナリストの意見が割れている現状のような時こそが投資妙味が大きいと思います。このことは今回の総合電機に限ったことではなく、他のセクターにも当てはまると思います。例えば見方が分かれている国内景気をどう見るか、本当に民需主導の景気回復の道筋が見えてきたのか、を考えることは内需関連セクターへの投資のヒントになるでしょう。まだ筆者は強気に転じていませんが、このセクター、例えば素材関連(紙パルプ、化学、鉄鋼など)や不動産などのアナリストのうちマーケット対比で強気な見方を持った人は少数派に属します。いわゆるオールドエコノミー企業の中にも今後注目できる企業は結構あると思っています。

□ 米国市場が気掛かり
 企業収益についてはあまり心配していないのですが、米国市場の動向は依然として気に掛かります。景気サイクルで見た場合、長期にわたって拡大してきた米国景気は既にピークにある可能性があります。このところ発表になっている経済指標の中では2000年第1QのGDPは5.4 %と事前予想の6.0 %は下回ったものの、国内最終需要は8.2 %と84年第2Q以来の高い伸びになっています。また物価上昇の目安となるデフレータも2.7 %と事前予想の2.2 %を上回っています。マーケットではこれで5月16 日のFOMCでは0.50 %の利上げが実施される可能性が高まってきたと考えられています。
  G.W中もNYダウは値動きが激しくなっているようですし、Nasdaqも行き過ぎたバリュエーションの修正からまだ底値が確認できない状況です。企業収益の拡大だけでは現在の高バリュエーションは支えきれるとは思えず、今後の動向は予断を許さないと思っています。その場合、日本株への影響は外人投資家の売りを誘発する恐れがあります。このことが原因で日本株の中長期の上昇相場が終わってしまうとは考えていませんが、短期的な波乱要因としては楽観視できないと思っています。
  

(注1)何度でも電気的に記憶の消去・書き込みができるROM(読み出し専用記憶装置:Read Only Memory)の一種。電源を切っても記憶が保持される性質を生かしてデジタルカメラや家庭用ゲーム機などのメモリカードや、パソコンのBIOSなどに利用されている。

永尾完治