先週来、世界的に株式が波乱の様相を呈しています。米国Nasdaqが史上最大の下げ幅を記録するなど世界的に情報通信関連銘柄の下げがきつかったのが主因です。さらにマーケットを撹乱したのが日経平均の銘柄入替えです。日本経済新聞社は91年以来9年ぶりに24日に30銘柄入れ替えるわけですが、あまりにも影響が大きいように思います。もう少し実施の方法に気を配るべきではなかったか、と思われる点がいくつかあります。
この入替えで日経平均に連動するポートフォリオを持っている投資家は銘柄入替えの行動を余儀なくされます。最も影響を及ぼしそうなのが裁定取引と株式投信のインデックスファンドです。日経平均連動型のインデックスファンドは正確なデータが手元にないのですが、業界全体で7300億円程度と記憶しています。そのインパクトはどのようになるのでしょうか?
それにはまず新しい採用銘柄の日経平均の225銘柄のポートフォリオを作ってみる必要があります。(下表参照) 日経平均の算出方法は対象の225銘柄を額面調整(注1)した上で株価を合計し除数(注2)で割る。というものなので一種の単純平均といえます。したがって株価の高いものの構成比が高くなります。今回採用された銘柄の中には高株価(値がさ)の株が多く含まれています。下表は新しい日経平均を構成比の高い順に上からならべたものです(株価は4月18日現在)。なんと上位10銘柄のうち8銘柄までが新規に採用された企業です。
| コード | 銘柄名 | 構成比 | 差 |
| 6857 | アドバンテ | 5.4% | 5.4% |
| 6781 | 松下通 | 4.6% | 4.6% |
| 6971 | 京セラ | 4.5% | 4.5% |
| 6762 | TDK | 4.3% | 4.3% |
| 8035 | 東エレク | 4.2% | 4.2% |
| 8183 | セブンイレブ | 3.9% | 3.9% |
| 9613 | NTTデータ | 3.7% | -2.9% |
| 6758 | ソニー | 3.6% | -2.8% |
| 9433 | DDI | 3.3% | 3.3% |
| 6954 | ファナック | 3.0% | 3.0% |
もし株式インデックスファンドが全て銘柄入替え分を買付けたとしたら例えばアドバンテストには推定380億円近い金額が流入してくるわけです。 (もっとも実際にはインデックスファンドの運用に際しては日経平均先物などを活用したりしますので推定より買いつけ額は小さくなります。)
理論的には21日の引け値で新旧の銘柄入替えを行なうのが望ましいのですが、現実にこれだけの入替えを一度に行なうことは不可能と思われ、既に銘柄入替えが始まっている様子です。また短期的な値上がりを期待した思惑で証券会社の自己ポジションなどの買いも入っていると推定されます。
□ 旧採用銘柄は幅広く売られる可能性
もう一点注意しなければいけないのは30銘柄の入替えには留まらないという点です。例えば上表ではNTTデータ、ソニーについては新構成銘柄では構成比がマイナスになります。この比率分だけ売られる要素になるわけです。これは全銘柄で見ると新構成銘柄では実に195銘柄の比率が低下します。これは銘柄入替えで新しく入る銘柄が値がさ株であることに起因します。このこと自体はマーケット指数の動向を示唆するものではありませんが、かなりの撹乱要因になると思います。
□ 新採用銘柄のリスク分析
次に今回の銘柄入替えでリスク特性がどのように変化したのかについて興味が沸いたので マルチファクターモデル(注3)を使って分析をしてみました。まず新旧の構成銘柄をTOPIXと比較をしてみましょう。TOPIXをベンチマークに設定した場合、現在の日経平均の推定トラッキングエラー(TE)(注4)は7.63、新構成銘柄では7.76となります。つまり、新しい構成銘柄ではさらにTOPIXとかけ離れた動きになることが推定されるわけです。この結果は日経が望んだものかどうかは分かりませんが、運用担当者としては少し意外な気がします。また、TEの水準自体もかなり高いといえます。
□ 成長性が最も高い
現在の日経平均をベンチマークに設定して新構成銘柄をみた場合、成長性の指標が最も高くなっています。このことは新構成銘柄になると日経平均は成長株重視の指数になっていることを表わします。 新しい選定基準は市場流動性が高い銘柄をこれまで以上に重視しているのですが、昨年売買が活発であった成長株の影響を強く受けています。これは良し悪しは別として産業構造の変化を反映した指数にするという日経が意図した通りの結果になっているといえます。
次にわかるのが過去に投資成果の高かった銘柄が多く入っていることがわかります。やはりというか、後追いの結果になっているようです。昨年のように二極化相場が続けばいいのですが、リターンリバーサル効果(注5)が働いた場合には日経平均のパフォーマンスは低下します。
□ 業種構成について
それぞれの業種別の構成比を見た場合、最も目立つのが電子部品で TOPIX7.03%、現在の日経平均4.51%に対し、新構成銘柄は17.94%となっています。新規に採用された京セラ、TDKなど電子部品メーカーの高株価が一因でしょう。 IT革命に配慮した銘柄入れ替えなのでやむをえないのでしょうが、それにしても電子部品だけで新旧の差が13%以上とはちょっと驚きです。
□ 今後は?
今回の入替えで昨年TOPIXに対して負けつづけた日経平均がリカバーするのかどうかはわかりませんが、人々が株が上がった、下がったの基準はやはり日経平均においている以上、入替えは重要な意味を持っているように思います。もし、昨年この入替えが行われていたら日経平均は25,000円になっていたという指摘もあります。そうなれば景況感を好転させることも可能だったのではないでしょうか。今後は一度に30銘柄も入れ替えるような乱暴なことはせずに、構造変化に対応していく指数であるよう期待したいものです
(注1)50円額面に合わせるため500円額面の株価は1/10、5万円額面の株価は1/1000にする。 (注2)市況変動ではない株価変動があった場合(例えば増減資などの権利落ちなど)この除数を修正が行われる。直近の除数は日経新聞の市況欄に掲載されている。 (注3)リスク予測モデルの一形態。実務で使われるものの中ではBARRAモデルなどが有名。 (注4)モデルによりベンチマークに連動しないリスクを年率の標準偏差で表わしたもの。数値が高いほどベンチマークに連動しないリスクが高まる。 (注5)ある期間の相対的なリターンが低かった(高かった)銘柄の次の期間のリターンが相対的に高くなる傾向があること。山崎 元氏「ファンドマネジメント」参照。 |