□ 恒例行事? 今年も毎年の恒例行事が無事に終わりました。決算対策です。期末が近づくと機関投資家は持ち合い解消売り、利益確定の売り、含み益を顕在化させる売りなど様々な行動に出ます。さらに今年は公的年金のポジション調整売り(注1)なども加わって、株式需給を悪化させる役者がそろっていましたが、今年の彼らの役ドコロは限定的だったようで、結局は大きな波乱はなく、無事に3月期末を通過しました。
□ 良好な企業収益 新年度以降に日本株が上昇する素地ができつつある様にみえます。その根拠の一つはファンダメンタルズにあり、依然として企業収益がプラスの方向で推移していることです。株式市場の焦点は既に2001年3月期以降に移っていますが、セルサイドアナリスト(注2)のボトムアップの収益予想(注3)によれば2001年3月期の経常利益(連結)の増益率は概ね10%台後半といったところで、IT投資の拡大と円高是正、リストラ効果により増益を維持といった説明がなされています。また企業収益を見る上で水準と同時に大切な収益モメンタム(勢い)についても昨年12月比で多くの予想機関の収益予想はプラスに修正されています。
□ 負の遺産は懸念材料ではない 同時に3月決算期末を迎え、個別企業が業績予想修正を発表するケースが増えてきました。中でも所謂オールドジャパン企業が退職給付会計(年金会計)の導入による積立不足を償却することによって最終赤字に転落するケースが散見されます。会計ビッグバンのスケジュールは2000年3月期決算に連結決算中心、実質支配力基準、2001年3月期決算に時価会計、退職給付会計、有価証券などの減損処理、2002年3月期決算に持ち合い株にも時価会計、減損会計、さらに時期は不明ですがゴーイングコンサーン、投資不動産会計なども検討されています。 この会計ビッグバンが株式市場に与える影響はどのように考えれば良いのでしょうか?一説には企業がこれから償却しなければならない積み不足の金額は60兆円にも上ると言われていますが、こういった類の情報は信憑性に欠け、仮に事実に近い数字であることが確認されたとしても、現時点で予想されうる事実は既に株式市場は織込んでいると考えるのが本筋のような気がします。問題はこの先この積み不足をどのように解決していくのかに焦点が移っていくと思われ、これを材料に弱気になる必要はないと考えています。むしろ企業がリストラ策を推進していくにあたっては、プラス材料として受け止めることができます。
□ ゼロ金利政策は継続見通し 株式のファンダメンタルズとしては企業収益と同時に金利動向を考えなければなりません。まず長期金利については2月にムーディーズが日本国債を格下げの方向に見直す、と発表し、債券市場への悪影響が懸念されましたが、日本国債を購入する外人投資家の比率が高くないことから、今のところは大きな影響は見られていません。今後はゼロ金利政策をいつ解除するのかに注目が集まっています。日銀は先の金融政策決定会合などでゼロ金利解除の可能性をちらつかせてきているのも事実なのですが、今すぐ解除というには程遠い状況です。国内景気が少しくらいよくなったくらいではゼロ金利の解除は見られないでしょう。当面、金利の上昇余地は大きくないと考えて良いと思います。
□ まだ大丈夫! 悪材料が見当たらず、証券会社のストラテジスト(注4)が総強気になった時は経験上危険なサインである事が多いのですが、今のところは洟垂れ(花粉症ではない!)エコノミスト達が「リストラを推進していく過程では雇用者所得の伸びは期待薄で、したがって個人消費は弱いため景気は悪い」などと言ってくれているので必ずしも全て環境が良い訳ではなく、かえって当面の株式市場は大丈夫なのかもしれません。 景気のサイクルは企業収益の回復、個人消費の回復という順番を繰り返しており、これが定説になっています。米国の例を振り返っても91年に企業収益が底打ちしてから、92年には2ケタ増益になっているのですが、この間失業率は5%台から7.8%まで上昇しています。リストラを推進する過程で失業率は上昇し、個人消費はさえない中、企業業績はリストラ効果で回復し、株高になるというロジックです。結局、米国株は90年6月の安値から10年弱で4.7倍になっています。ここから判断する限り、日本のブルマーケット(注5)もまだその緒についたばかりでそのスケールは大きくなる可能性があり、まだまだ楽しみといえるでしょう。
| (注1)公的年金の一部は依然、株式の時価ウエイトで資産配分の制約を受けているところがあり、株価が上昇してポートフォリオに占める株式比率が高くなりすぎると売らざるをえなくなること。あくまでも推定にすぎないが、日経金融新聞などで指摘されている。 (注2)この場合は主に証券会社に働くアナリストを指す。近年では株式を買う投資家の立場の会社も自前のアナリストを持っており、こちらはバイサイドアナリストと呼ぶ。マーケットではそれぞれの置かれた立場が考え方に影響を及ぼす場合があってこのように区別する場合が多い。 (注3)アナリストが行なう収益予想は2種類あって、セクター別のアナリストが個別企業の収益予想を行い、それを積み上げてマーケット全体の動向を推定するボトムアップというやり方と、マクロ経済の視点から企業収益をモデルなどを使って推定するトップダウンというやり方があり、それぞれ一長一短がある。 (注4)直訳的には投資戦略を策定する人のこと事を指すが、マーケット分析のアナリストをこう呼ぶことも多い。 (注5)強気相場のこと。対義語はベアマーケット。主に米国では相場の見通しで強気をbull(雄牛)、弱気をbear(熊)に喩える。 |